AIの基本と看護応用

A(I 人工知能)とはA(I Artificial Intelligence、人工知能)は、コンピュータに人間の知的活動を模 倣・拡張する能力を持たせる技術の総称です。1950 年代の「記号的 AI」から始まり、 現在の「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」へと進化を遂げてきました。 機械学習では、大量のデータをもとにパターンを学習し、新たな入力に対して予測 や分類を行います。深層学習は多層のニューラルネットワークを活用することで、高 精度な画像認識や自然言語処理を実現し、医療・看護を含む多様な分野で急速 に存在感を高めています。EHR(電子健康記録)からのリスク推定看護師は日々、患...

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Published in看護薬理学カンファレンス p. S2-2
Main Author 高橋, 聡明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬理学会 2025
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ISSN2435-8460
DOI10.34597/npc.2025.1.0_S2-2

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Abstract A(I 人工知能)とはA(I Artificial Intelligence、人工知能)は、コンピュータに人間の知的活動を模 倣・拡張する能力を持たせる技術の総称です。1950 年代の「記号的 AI」から始まり、 現在の「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」へと進化を遂げてきました。 機械学習では、大量のデータをもとにパターンを学習し、新たな入力に対して予測 や分類を行います。深層学習は多層のニューラルネットワークを活用することで、高 精度な画像認識や自然言語処理を実現し、医療・看護を含む多様な分野で急速 に存在感を高めています。EHR(電子健康記録)からのリスク推定看護師は日々、患者の身体状態や生活背景を観察し、転倒や褥瘡、点滴漏れな どのリスクを予測しながらケアを行っています。EHR(電子健康記録)には、バイ タルサインや検査値、投薬履歴、看護記録といった膨大なデータが蓄積されており、 AIを用いてこれらを解析することで、従来の経験や直感だけでは捉えきれないリ スク因子を抽出し、客観的な数値として提示できるようになってきています。 自動画像処理を活用した看護支援創傷ケアや超音波検査では、従来、経験や視覚による評価に依存していたため、 評価のばらつきや記録の標準化が課題とされてきました。近年の深層学習を応用 した画像解析技術は、スマートフォンやタブレット端末で撮影した創傷部位や超音 波検査の画像を自動的に解析し、大きさ・深さ・色調などを定量化できます。これ によって尿量や便性状、誤嚥性物質、血管の形状や血栓の検出が可能となりました。導入上の課題と今後の展望 AIの導入を検討する際、大きな課題として「看護の行為・プロセスが十分にデータ化されていない」現状が挙げられます。EHRには検査値や投薬履歴などの数値 化しやすい情報は多く含まれていますが、看護師行う判断やケアの詳細は、必ずし も構造化された形で記録されていないのが実情です。これにより、AI が分析でき るデータセットが限定され、リスク推定や創傷評価の精度向上にも限界が生じてい ます。今後は、看護記録をより標準化・構造化すると同時に、センサー技術を活用して、 看護師が提供するケアの過程や患者の行動データを可能な範囲で自動取得・蓄積 する仕組みづくりが求められます。これらの課題を乗り越え、看護業務の可視化・ 定量化が進めば、AI が看護師の判断をより的確にサポートし、患者中心のケアを 強化することが期待されます。
AbstractList A(I 人工知能)とはA(I Artificial Intelligence、人工知能)は、コンピュータに人間の知的活動を模 倣・拡張する能力を持たせる技術の総称です。1950 年代の「記号的 AI」から始まり、 現在の「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」へと進化を遂げてきました。 機械学習では、大量のデータをもとにパターンを学習し、新たな入力に対して予測 や分類を行います。深層学習は多層のニューラルネットワークを活用することで、高 精度な画像認識や自然言語処理を実現し、医療・看護を含む多様な分野で急速 に存在感を高めています。EHR(電子健康記録)からのリスク推定看護師は日々、患者の身体状態や生活背景を観察し、転倒や褥瘡、点滴漏れな どのリスクを予測しながらケアを行っています。EHR(電子健康記録)には、バイ タルサインや検査値、投薬履歴、看護記録といった膨大なデータが蓄積されており、 AIを用いてこれらを解析することで、従来の経験や直感だけでは捉えきれないリ スク因子を抽出し、客観的な数値として提示できるようになってきています。 自動画像処理を活用した看護支援創傷ケアや超音波検査では、従来、経験や視覚による評価に依存していたため、 評価のばらつきや記録の標準化が課題とされてきました。近年の深層学習を応用 した画像解析技術は、スマートフォンやタブレット端末で撮影した創傷部位や超音 波検査の画像を自動的に解析し、大きさ・深さ・色調などを定量化できます。これ によって尿量や便性状、誤嚥性物質、血管の形状や血栓の検出が可能となりました。導入上の課題と今後の展望 AIの導入を検討する際、大きな課題として「看護の行為・プロセスが十分にデータ化されていない」現状が挙げられます。EHRには検査値や投薬履歴などの数値 化しやすい情報は多く含まれていますが、看護師行う判断やケアの詳細は、必ずし も構造化された形で記録されていないのが実情です。これにより、AI が分析でき るデータセットが限定され、リスク推定や創傷評価の精度向上にも限界が生じてい ます。今後は、看護記録をより標準化・構造化すると同時に、センサー技術を活用して、 看護師が提供するケアの過程や患者の行動データを可能な範囲で自動取得・蓄積 する仕組みづくりが求められます。これらの課題を乗り越え、看護業務の可視化・ 定量化が進めば、AI が看護師の判断をより的確にサポートし、患者中心のケアを 強化することが期待されます。
Author 高橋, 聡明
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  fullname: 高橋, 聡明
  organization: 東京大学大学院 医学系研究科 老年看護学 創傷看護学 講師
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Copyright 2025 本論文著者
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