症例 第四脳室上衣腫摘出術後に前壁心筋梗塞を発症した7歳男児例

症例は7歳男児.昭和62年10月26日に3回目の第四脳室上衣腫摘出術を受けた.翌日より心電図上I, aVL, V1~V4のST上昇が認められ,CPK, GOT, LDHも経蒔的に上昇し,心エコーで左室前壁・中隔のhypokinesisを呈した。約1カ月後に施行した心臓カテーテル検査では両心の各内圧は正常で,左室造影所見には異常がなく,また,冠状動脈造影所見にも有意な狭窄や閉塞を認めなかった.症例は約2カ月後,肺炎により死亡した.剖検心において,組織学的に左右の冠状動脈内模の線維性肥厚による狭窄を認め,左心室心筋の一部に,心筋梗塞の搬痕を思わせる散在性の線維化巣を認めた.脳血管障害や脳手術後に種...

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Published in心臓 Vol. 21; no. 11; pp. 1314 - 1318
Main Authors 柴田, 雅士, 荒川, 直志, 那須, 雅孝, 瀬川, 郁夫, 大浦, 弘之, 笹生, 俊一, 三浦, 秀悦, 鈴木, 智之, 久保, 直彦, 金谷, 春之, 高橋, 明, 加藤, 政孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1989
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.21.11_1314

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Summary:症例は7歳男児.昭和62年10月26日に3回目の第四脳室上衣腫摘出術を受けた.翌日より心電図上I, aVL, V1~V4のST上昇が認められ,CPK, GOT, LDHも経蒔的に上昇し,心エコーで左室前壁・中隔のhypokinesisを呈した。約1カ月後に施行した心臓カテーテル検査では両心の各内圧は正常で,左室造影所見には異常がなく,また,冠状動脈造影所見にも有意な狭窄や閉塞を認めなかった.症例は約2カ月後,肺炎により死亡した.剖検心において,組織学的に左右の冠状動脈内模の線維性肥厚による狭窄を認め,左心室心筋の一部に,心筋梗塞の搬痕を思わせる散在性の線維化巣を認めた.脳血管障害や脳手術後に種々の心電図変化が発現することは知られている.その原因はいまだ不明であるが,本症例の場合,脳腫瘍摘出術が視床下部周辺を刺激した可能性が推測される.その結果,交感神経系が過緊張状態になり冠状動脈攣縮を起こし,急性心筋梗塞を呈したと考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.21.11_1314