症例 心筋梗塞様心電図波形を呈した心筋挫傷の1例

症例は17歳,女性.道路を歩行中に対向してきたバスと接触し,全身打撲のため緊急入院した.胸部に擦過傷および皮下出血がみられたが,胸郭の変形はなかった.心電図上完全右脚ブロックに加えてII・III・aVF・V1・V2・V3に異常Q波があり,CK-MB ,GOT,LDHなど心筋逸脱酵素の上昇を伴ったので,心筋梗塞との鑑別が問題になった.しかし,心エコー図・心筋シンチグラム・心血管造影では異常が認められず,経過とあわせて臨床的に外傷性心筋挫傷による変化と診断した. 近年,交通事故時の鈍的胸部外傷による心筋挫傷が増加しているが,特異的な所見はなく,その診断は必ずしも容易でない.本報告では,心筋挫傷の発...

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Published in心臓 Vol. 21; no. 5; pp. 611 - 617
Main Authors 籠島, 忠, 大塚, 文明, 西田, 育功, 石川, 兵衛, 梅原, 雅樹, 青山, 信房, 葛本, 雅之, 上田, 一也, 船谷, 泰嗣, 土井, 康司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1989
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.21.5_611

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Summary:症例は17歳,女性.道路を歩行中に対向してきたバスと接触し,全身打撲のため緊急入院した.胸部に擦過傷および皮下出血がみられたが,胸郭の変形はなかった.心電図上完全右脚ブロックに加えてII・III・aVF・V1・V2・V3に異常Q波があり,CK-MB ,GOT,LDHなど心筋逸脱酵素の上昇を伴ったので,心筋梗塞との鑑別が問題になった.しかし,心エコー図・心筋シンチグラム・心血管造影では異常が認められず,経過とあわせて臨床的に外傷性心筋挫傷による変化と診断した. 近年,交通事故時の鈍的胸部外傷による心筋挫傷が増加しているが,特異的な所見はなく,その診断は必ずしも容易でない.本報告では,心筋挫傷の発生頻度,診断,本例における心筋梗塞様心電図波形・右脚ブロックの成因について考察を加えた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.21.5_611