症例 脳症を伴う著明な肝障害を合併した僧帽弁狭窄症の1例

高度の僧帽弁狭窄症の62歳の女性患者で,内服薬服用の中断を契機に一過性の循環不全に陥り,脳症をも伴う著明な肝障害をきたした1例を経験した. 入院時には血圧低下,肺うっ血所見および低酸素血症を認めたが,内科的治療により,短時間で全身の循環動態は改善した.しかし第3病日に羽ばたき振戦を伴う意識障害が出現し,脳波上でも代謝障害にもとづく脳症と考えられた.著しいプロトロンビン時間の延長,血清酵素の異常高値などを認め,肝性脳症と診断した.その後,血液所見の急激な改善とともに脳症は消失した.第43病日の症状改善後の肝生検標本では,軽度ながら中心静脈周囲にうっ血,変性の所見を認めた.心疾患例において,脳症を...

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Published in心臓 Vol. 18; no. 3; pp. 342 - 348
Main Authors 川村, 顕, 楠原, 正俊, 藤島, 清太郎, 永田, 雅良, 大枝, 由充子, 加藤, 真三, 渡辺, 憲明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1986
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.18.3_342

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Summary:高度の僧帽弁狭窄症の62歳の女性患者で,内服薬服用の中断を契機に一過性の循環不全に陥り,脳症をも伴う著明な肝障害をきたした1例を経験した. 入院時には血圧低下,肺うっ血所見および低酸素血症を認めたが,内科的治療により,短時間で全身の循環動態は改善した.しかし第3病日に羽ばたき振戦を伴う意識障害が出現し,脳波上でも代謝障害にもとづく脳症と考えられた.著しいプロトロンビン時間の延長,血清酵素の異常高値などを認め,肝性脳症と診断した.その後,血液所見の急激な改善とともに脳症は消失した.第43病日の症状改善後の肝生検標本では,軽度ながら中心静脈周囲にうっ血,変性の所見を認めた.心疾患例において,脳症をも伴う著明な肝障害の合併例の報告は少ない.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.18.3_342