老年糖尿病患者の血糖コントロールと血管合併症との関係

老年糖尿病患者への管理として血糖コントロールを厳しく行う方が, 糖尿病患者の血管合併症を少なくしうるかどうかを明確にすることは重要である. そこで老年糖尿病患者の細小血管症と動脈硬化性疾患の発生に血糖コントロールの良否がどう影響するかを調べた. 高知県17医療機関の糖尿病の専門医師18名が受け持っている患者898例 (男性466例, 女性432例) につき, 平均69カ月におよぶ長期観察記録より臨床検査値の平均を算出し, これを個々の症例の代表値とした. 血糖コントロール良好群では平均的なFBSは150mg/dl未満であるとし, 不良群では150mg/dl以上とした. 65歳以上 (I群) の...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 32; no. 11; pp. 747 - 755
Main Authors 松本, 孝文, 沼田, 幸子, 高田, 宏美, 池田, 幸雄, 高松, 和永, 弘井, 泰夫, 仲田, 浩之, 葛岡, 哲男, 橋本, 浩三, 松茂, 知, 高慶, 承平, 宇賀, 茂敏, 齊藤, 昇, 高知県糖尿病研究グループ, 近森, 一正, 服部, 嘉之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.11.1995
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.32.747

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Summary:老年糖尿病患者への管理として血糖コントロールを厳しく行う方が, 糖尿病患者の血管合併症を少なくしうるかどうかを明確にすることは重要である. そこで老年糖尿病患者の細小血管症と動脈硬化性疾患の発生に血糖コントロールの良否がどう影響するかを調べた. 高知県17医療機関の糖尿病の専門医師18名が受け持っている患者898例 (男性466例, 女性432例) につき, 平均69カ月におよぶ長期観察記録より臨床検査値の平均を算出し, これを個々の症例の代表値とした. 血糖コントロール良好群では平均的なFBSは150mg/dl未満であるとし, 不良群では150mg/dl以上とした. 65歳以上 (I群) の417例は71.8±5.3歳 (M±SD) であり, 65歳未満 (II群) の481例は54.4±8.4歳であった. I群の血糖コントロール良好群と不良群を比較すると, 両群で血圧, body mass index (BMI) と血清脂質に有意差がなく, 動脈硬化性疾患の心筋梗塞, 脳梗塞や閉塞性大動脈硬化症の発生もほぼ同様の頻度であった. 細小血管症の網膜症, 腎症と糖尿病性神経症は血糖コントロール不良群で良好群に比較して多かった (x2 p<0.01). II群の血糖コントロール良好群と不良群でもI群と同様であった. 治療内容では良好群で食事療法のみが多く, 不良群で経口血糖降下剤やインスリン使用も多く, 糖尿病の重症度の違いを示していた. 血糖コントロールの良好の理由として食事療法を守るが7割で多く, 次いで規則正しい薬剤服用が3割で, 体重減量は1割に過ぎなかった. 反対に不良の理由として食事療法を守らないが8割であり, 薬剤服用の不規則や体重増加は1割づつであった. なお, 年齢別にI群とII群とで比較すると, I群で動脈硬化性疾患が多く (p<0.05), 細小血管症はI群とII群で有意差を示さなかった. 性別に分けると男性で動脈硬化性疾患が多いが, 細小血管症は男女による差を示さなかった. 以上, 65歳以上でも65歳未満と同様に, 血糖コントロール不良群で細小血管症の発生が有意に多く, 老年糖尿病患者でも血糖コントロール管理の重要性が示された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.32.747