事例提示における児童の概念変換に関する一考察~二球の衝突を事例に

小学校4、5、6年生の児童に対して、3例の2球の衝突事象を演示し、それぞれ事例の演示後に「衝突」に関する児童の考え方を記述させた。提示事例は、3例のうちいずれかが児童の予想と矛盾する反例となるように選定した。児童の記述に基づき、児童の概念変換を分類したところ、「生成」「置換」「拡張」「修正」「統合」「固執」「縮小」「理由無し」の8つに類型化された。分析の結果、次のことが明らかになった。①児童の中で、プラスの学習効果を生むと見られる5つの変換「生成」「置換」「拡張」「修正」「統合」が約7割を占め、児童は自ら精極的に学習している。②学年が上がるにつれて、より前概念(Preconception)をも...

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Published in日本理科教育学会研究紀要 Vol. 34; no. 3; pp. 19 - 27
Main Authors 福岡, 敏行, 鈴木, 克彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本理科教育学会 1994
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ISSN0389-9039
2433-0140
DOI10.11639/formersjst.34.3_19

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Summary:小学校4、5、6年生の児童に対して、3例の2球の衝突事象を演示し、それぞれ事例の演示後に「衝突」に関する児童の考え方を記述させた。提示事例は、3例のうちいずれかが児童の予想と矛盾する反例となるように選定した。児童の記述に基づき、児童の概念変換を分類したところ、「生成」「置換」「拡張」「修正」「統合」「固執」「縮小」「理由無し」の8つに類型化された。分析の結果、次のことが明らかになった。①児童の中で、プラスの学習効果を生むと見られる5つの変換「生成」「置換」「拡張」「修正」「統合」が約7割を占め、児童は自ら精極的に学習している。②学年が上がるにつれて、より前概念(Preconception)をもとに学習する。③事例提示の進行により、「生成」→「固執」→「置換」→「拡張・修正」→「統合」という、概念変換の類型の順序性が見られる。また、この順序性は、児童の概念形成過程を示していると思われる。しかし、上記とは異なった「その場限り」の考え方をしたり、前概念に「固執」したりするような事例があり、今後は、さらに情意面やメタ認知に関する考察をする必要がある。
ISSN:0389-9039
2433-0140
DOI:10.11639/formersjst.34.3_19