数学学習における誤りからの「教訓帰納」の内容と学業成績との関係についての実験的事例と考察

本研究の目的は,学習者が解決に失敗した数学の問題から抽出する教訓の内容と,数学の学業成績との関連を検討することである.高校生に,ある代数文章題の解決を試みさせた.解決に失敗した41名の生徒に,なぜ解決に失敗したと思うかを記述させた.学業成績の高い20名の学習者のうち15名(75%)は,この問題と類似した問題の解決に役立つと考えられる有効な教訓を引き出した.有効な教訓には様々な内容のものがあった.一方,学業成績の低い21名の学習者では,そのような教訓を引き出したのは7名(33%)にとどまった.学業成績の低い生徒の記述内容を検討したところ,例えば学習の質より量を重視するような彼らの持つ学習観が,有...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本教育工学雑誌 Vol. 22; no. 2; pp. 119 - 128
Main Authors 寺尾, 敦, 市川, 伸一, 楠見, 孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本教育工学会 20.09.1998
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0385-5236
2432-6038
DOI10.15077/jmet.22.2_119

Cover

More Information
Summary:本研究の目的は,学習者が解決に失敗した数学の問題から抽出する教訓の内容と,数学の学業成績との関連を検討することである.高校生に,ある代数文章題の解決を試みさせた.解決に失敗した41名の生徒に,なぜ解決に失敗したと思うかを記述させた.学業成績の高い20名の学習者のうち15名(75%)は,この問題と類似した問題の解決に役立つと考えられる有効な教訓を引き出した.有効な教訓には様々な内容のものがあった.一方,学業成績の低い21名の学習者では,そのような教訓を引き出したのは7名(33%)にとどまった.学業成績の低い生徒の記述内容を検討したところ,例えば学習の質より量を重視するような彼らの持つ学習観が,有効な教訓の引き出しを妨げていることが示唆された.教育工学的研究に対して,学習観の変化と多様な教訓の獲得が促進されるような教育システムの開発が必要である,ということを主張する.
ISSN:0385-5236
2432-6038
DOI:10.15077/jmet.22.2_119