甲状腺手術時の非操作側の反回神経に与える影響について~持続神経モニタリングの使用経験より
症例は右声帯麻痺を認める57歳の男性。甲状腺右葉に2.1cmの腫瘍を認め,細胞診で乳頭癌(cT4aEX2右反回神経N0M0)と診断し甲状腺全摘術およびD1郭清術を予定。甲状腺左葉側から手術開始し,左迷走神経にAPSTM電極を手術開始から終了まで装着した。左側終了時には左迷走神経のAmplitudeは低下を認めず(1,251μV),右側の術操作を開始した。右葉の原発巣の切除の為気管を脱転した際に,左側迷走神経のAmplitudeが144μVまで低下を認めたので手術の中断・再開を繰り返しながら甲状腺切除を完遂した。閉創時の左迷走神経V2のAmplitudeは891uVであった。術後の喉頭ファイバー...
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Published in | 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol. 37; no. 4; pp. 310 - 314 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
2020
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Subjects | |
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ISSN | 2186-9545 |
DOI | 10.11226/jaesjsts.37.4_310 |
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Summary: | 症例は右声帯麻痺を認める57歳の男性。甲状腺右葉に2.1cmの腫瘍を認め,細胞診で乳頭癌(cT4aEX2右反回神経N0M0)と診断し甲状腺全摘術およびD1郭清術を予定。甲状腺左葉側から手術開始し,左迷走神経にAPSTM電極を手術開始から終了まで装着した。左側終了時には左迷走神経のAmplitudeは低下を認めず(1,251μV),右側の術操作を開始した。右葉の原発巣の切除の為気管を脱転した際に,左側迷走神経のAmplitudeが144μVまで低下を認めたので手術の中断・再開を繰り返しながら甲状腺切除を完遂した。閉創時の左迷走神経V2のAmplitudeは891uVであった。術後の喉頭ファイバー検査では,術前からの右声帯麻痺を認めたが,左声帯の運動は問題なかった。当院の検討では甲状腺手術時の非手術操作側の声帯麻痺は0.12%に認められる。今回の症例は,甲状腺手術時の術操作による反対側の反回神経へのダメージを持続的な筋電図の変化によってモニタリングした初めての報告として興味深いと思われた。 |
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ISSN: | 2186-9545 |
DOI: | 10.11226/jaesjsts.37.4_310 |