都市在住の高齢者におけるソーシャル・サポートと抑うつ症状の関連性

都市在住の高齢者におけるソーシャル・サポートと抑うつ症状の関連を明らかにするため, 仙台市T地区の70歳以上住民に対し総合機能評価を平成14年7月から8月に行った. 対象2,730人のうち1,198人が参加し, 聞き取り調査を受けた. ソーシャル・サポートに関しては, 村岡ら (1996) の調査票により (i) 困ったときの相談相手, (ii) 体の具合の悪いときの相談相手, (iii) 家事などの日常生活を援助してくれる人, (iv) 具合の悪いとき病院に連れて行ってくれる人, (v) 寝込んだとき身の回りの世話をしてくれる人の有無を尋ねた. 抑うつ症状の評価は Geriatric Dep...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 41; no. 4; pp. 426 - 433
Main Authors 中谷, 直樹, 小泉, 弥生, 粟田, 主一, 関, 徹, 大森, 芳, 栗山, 進一, 鈴木, 寿則, 寳澤, 篤, 荒井, 啓行, 海老原, 覚, 辻, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.2004
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.41.426

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Summary:都市在住の高齢者におけるソーシャル・サポートと抑うつ症状の関連を明らかにするため, 仙台市T地区の70歳以上住民に対し総合機能評価を平成14年7月から8月に行った. 対象2,730人のうち1,198人が参加し, 聞き取り調査を受けた. ソーシャル・サポートに関しては, 村岡ら (1996) の調査票により (i) 困ったときの相談相手, (ii) 体の具合の悪いときの相談相手, (iii) 家事などの日常生活を援助してくれる人, (iv) 具合の悪いとき病院に連れて行ってくれる人, (v) 寝込んだとき身の回りの世話をしてくれる人の有無を尋ねた. 抑うつ症状の評価は Geriatric Depression Scale (GDS) 30項目を用い, GDSに回答した1,170人のうち, Mini-Mental State Examination (MMSE) が18点以上で研究に同意した1,146人を解析対象とした. GDS 10点以下を非抑うつ群, 11点以上または抗うつ剤服用者を抑うつ群とした. ソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状の出現に関する多変量補正オッズ比 (95%信頼区間) を (i) から (v)の各項目について, 多重ロジスティック回帰分析により算出した. その際, 年齢, 配偶者の有無, 同居人数, 既往疾患数, 教育レベル, 認知機能, 運動能力, 痛み, 主観的健康度を補正した. 抑うつ群は男性134人 (27.9%), 女性259人 (38.9%) であった. 質問 (i) から (v) まで各々の「ある」者に比べて「ない」者では抑うつ症状出現のオッズ比 (95%信頼区間) は, 男性では (i) 2.5 (1.5~4.1), (ii) 1.9 (1.1~3.2), (iii) 2.7 (1.7~4.4), (iv) 1.9 (1.1~3.2), (v) 2.8 (1.6~4.9) と全項目で有意に上昇した. 女性では (i) 1.2 (0.8~1.8), (ii) 1.2 (0.8~1.8), (iii) 1.4 (1.0~2.0), (iv) 1.6 (1.1~2.3), (v) 2.0 (1.4~2.9) と (iii), (iv), (v) の項目で有意にオッズ比が上昇した. 都市部高齢者では男女ともソーシャル・サポートの欠如と抑うつ症状との間に有意な関連があった. しかも男性では, 関連するソーシャル・サポートの種類と関連の強さの両面において影響が顕著であった.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.41.426