脊髄加齢変化の形態計測学的研究

生前に明らかな神経症状の既往がなく, 神経病理学的に脊髄疾患の認められない140剖検例 (47~105歳) において, 脊髄長, 各髄節長, 第6頸髄と第3腰髄の全断面積, 白質面積, 灰白質面積と年齢の関係について検討した. 病的対照として頸髄に圧迫変形を認める40例を用いた. さらに3年以上の寝たきり11例にて寝たきりの脊髄への影響を検討した. 脊髄全長は身長と正の相関関係にあり, 年齢と相関しなかった. 脊髄全断面積は頸髄, 腰髄とも高齢ほど減少していたが, その変化は腰髄より頸髄にて著明であった. また, 白質, 灰白質面積では両者とも減少していたが, その変化は白質により著明であった...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 31; no. 6; pp. 462 - 467
Main Authors 水谷, 俊雄, 江崎, 行芳, 佐々木, 明徳, 山田, 滋雄, 向井, 雅美, 高崎, 優
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.06.1994
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.31.462

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Summary:生前に明らかな神経症状の既往がなく, 神経病理学的に脊髄疾患の認められない140剖検例 (47~105歳) において, 脊髄長, 各髄節長, 第6頸髄と第3腰髄の全断面積, 白質面積, 灰白質面積と年齢の関係について検討した. 病的対照として頸髄に圧迫変形を認める40例を用いた. さらに3年以上の寝たきり11例にて寝たきりの脊髄への影響を検討した. 脊髄全長は身長と正の相関関係にあり, 年齢と相関しなかった. 脊髄全断面積は頸髄, 腰髄とも高齢ほど減少していたが, その変化は腰髄より頸髄にて著明であった. また, 白質, 灰白質面積では両者とも減少していたが, その変化は白質により著明であった. これらより脊髄の萎縮は白質の変化により関係していると思われた. しかしこれらの断面積の減少も, 病的対照と比べるとその程度は軽く, 加齢による純粋な萎縮は予想外に小さかった. 一方, 寝たきり11例列はすべて90歳以上であり, この年代で非寝たきり16例と比較すると, 寝たきり例にて腰髄の断面積, 灰白質面積の有意な減少を認めた. これより“寝たきり”では, 腰髄に対して加齢と異なる機序が働いている可能性が考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.31.462