老年期痴呆における流血中ムスカリン性アセチルコリン受容体抑制因子に関する研究

老年期痴呆, 特にアルツハイマー型老年痴呆 (以下SDATと略す) において種々の神経伝達物質およびこれらに対する脳内受容体活性の異常が知られている. 本研究においてはラット脳シナプス膜分画ムスカリン性アセチルコリン受容体 (以下m-AchRと略す) に対する老年期痴呆例循環血液中の結合阻害因子の存在を検出し, また臨床上評価された老年期痴呆の分類, 程度との対比を試みた. 対象は高齢者95名 (男性34例, 女性61例) でその平均年齢±標準偏差は77.5±8.6歳であった. これらの対象例の痴呆の程度は, Mini-Mental State (以下MMSと略す) により評価し, 得点が21...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 28; no. 3; pp. 345 - 350
Main Authors 荻原, 俊男, 今中, 俊爾, 宮, 敬子, 高, 栄男, 北野, 昇一, 白石, 恒人, 福尾, 恵介, 森本, 茂人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.05.1991
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.28.345

Cover

More Information
Summary:老年期痴呆, 特にアルツハイマー型老年痴呆 (以下SDATと略す) において種々の神経伝達物質およびこれらに対する脳内受容体活性の異常が知られている. 本研究においてはラット脳シナプス膜分画ムスカリン性アセチルコリン受容体 (以下m-AchRと略す) に対する老年期痴呆例循環血液中の結合阻害因子の存在を検出し, また臨床上評価された老年期痴呆の分類, 程度との対比を試みた. 対象は高齢者95名 (男性34例, 女性61例) でその平均年齢±標準偏差は77.5±8.6歳であった. これらの対象例の痴呆の程度は, Mini-Mental State (以下MMSと略す) により評価し, 得点が21~30点の非痴呆群21例と20点以下の痴呆群74例に分類した. 痴呆例はさらに Hatchinski の脳虚血スコアにより, SDAT 49例, 脳血管性痴呆 (以下VDと略す) 21例および混合型痴呆4例に分類した. ラット脳シナプス膜分画を Whittaker らの方法により調整し, 患者血清添加による3H-quinuclidinyl benzilate (以下3H-QNBと略す) の膜分画結合に対する抑制率を測定し, 循環血流中m-AchR抑制因子の関与を検討した. SDAT群は非痴呆群に比し, 血清添加時の3H-QNBのラット脳シナプス膜分画への結合抑制率は有意 (p<0.01) の高値 (18.1±7.2 vs 4.7±3.8%) を示したが, VD群と非痴呆群間に有意差はなかった (8.4±6.8 vs 4.7±3.8%). またSDAT群においてMMSの得点と血清添加時の3H-QNBのラット脳シナプス膜分画への結合能との間には有意 (r=0.480, p<0.01) の正の相関を認めた. 以上のことより, 老年期痴呆のうちSDAT例の発症, 進展に, 流血中m-AchR抑制因子が関与していると考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.28.345