成人膿胸20例の細菌学的, 臨床的検討 嫌気性菌の重要性
1972年11月~1981年10月の10年間に当内科で経験した成人の非結核性膿胸20例を検討した. 膿胸20例のうち, 嫌気性菌のみによるもの4例 (20%), 嫌気性菌と好気性~通性嫌気性菌との混合感染8例 (40%) であった. 1例当りの分離菌株数はそれぞれ2.5株と3.8株 (この中の2.4株は嫌気性菌) であった. 好気性菌のみによる6例はすべて単一菌感染, 菌陰性のものは2例であった. これら18例から分離された細菌総株数は50株で, これらの中の29株が嫌気性菌であった. 主な細菌を分離頻度が高い順に示すと, Bacteroides属10株, Peptostreptococcus...
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| Published in | 感染症学雑誌 Vol. 57; no. 2; pp. 171 - 179 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.02.1983
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0387-5911 1884-569X |
| DOI | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.57.171 |
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| Summary: | 1972年11月~1981年10月の10年間に当内科で経験した成人の非結核性膿胸20例を検討した. 膿胸20例のうち, 嫌気性菌のみによるもの4例 (20%), 嫌気性菌と好気性~通性嫌気性菌との混合感染8例 (40%) であった. 1例当りの分離菌株数はそれぞれ2.5株と3.8株 (この中の2.4株は嫌気性菌) であった. 好気性菌のみによる6例はすべて単一菌感染, 菌陰性のものは2例であった. これら18例から分離された細菌総株数は50株で, これらの中の29株が嫌気性菌であった. 主な細菌を分離頻度が高い順に示すと, Bacteroides属10株, Peptostreptococcus属8, microaerophilic streptococci 6, Fusobacterium属3株などであった. 嫌気性菌感染群12例中11例 (92%) で胸水に悪臭が認められたが, 好気性菌群と菌陰性群では胸水に悪臭を認めたものは皆無であった. 胸腔内ガス貯溜は嫌気性菌群の7例 (59%) で認められたのに対して. 好気性菌群あるいは菌陰性群のいずれにおいても, 気管支胸膜瘻を生じていた1例を除いては, みられなかった. これらの結果は, 嫌気性菌が大多数の膿胸の病原菌として重要な役割を演じるものであるから, 正しい細菌学的診断と適切な化学療法剤選択のために嫌気培養が不可欠であることを示している. 胸水の悪臭と胸腔内ガス貯溜は, 嫌気培養の結果が出る前に嫌気性菌が関与した膿胸であることを予測的に診断する手掛りとなる信頼すべき臨床所見である. |
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| ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
| DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.57.171 |