老年者脳槽シンチグラムの再評価: pseudo NPHの多発について
CT検査の導入により明確な脳の解剖学的所見が得られるようになった. これらの所見を加味して脳槽シンチグラフィーを再評価することが必要と思われる. そこで, 脳槽シンチグラフィーを行った患者201例について, 脳室内逆流の程度を, (1) 非逆流型 (Type I), (2) 一過性逆流型 (Type II), (3) 遅延逆流型 (Type III), (4) 逆流下降型 (Type IV), (5) 低濃度停滞型 (Type V), (6) 高濃度停滞型 (Type VI) の6つの型に分類し, それらの型と脳血管障害, 側脳室の型, 脳室の大きさ, 脳溝の拡大度などのCT所見, 脳脊髄液お...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 361 - 368 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.07.1987
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.24.361 |
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Summary: | CT検査の導入により明確な脳の解剖学的所見が得られるようになった. これらの所見を加味して脳槽シンチグラフィーを再評価することが必要と思われる. そこで, 脳槽シンチグラフィーを行った患者201例について, 脳室内逆流の程度を, (1) 非逆流型 (Type I), (2) 一過性逆流型 (Type II), (3) 遅延逆流型 (Type III), (4) 逆流下降型 (Type IV), (5) 低濃度停滞型 (Type V), (6) 高濃度停滞型 (Type VI) の6つの型に分類し, それらの型と脳血管障害, 側脳室の型, 脳室の大きさ, 脳溝の拡大度などのCT所見, 脳脊髄液および臨床症状等との関係について検討を加えた. 全症例中, 何らかの逆流を示す症例は約50%を占め, 高濃度停滞型は約6%, 低濃度停滞型は約9%の症例に見られた. 脳血管障害 (CVD) の有無により, これらの型の出現頻度には殆ど差は認められなかった. 正常圧水頭症 (NPH) を高頻度に起こすクモ膜下出血 (SAH) 群では, 高濃度停滞型が全体の40%と高い割合を示し, NPHと高濃度停滞型が深い関連を有することを示唆した. 高濃度停滞型では, CT所見上, 非逆流型の症例に比し, 側脳室が有意に拡大しており (p<0.01), 側脳室前角の拡大が50%に見られた. また, 脳脊髄液圧に関しては, 高濃度停滞型はCVDのない低濃度停滞型に比して有意に高かった (p<0.05). 老年者における脳室逆流の意義とNPHとの関係について考察を行った. 老年者では脳血管障害の有無にかかわらず, 加齢的要因に基づく脳脊髄液腔の拡大, 脳脊髄液循環の遅延など脳室内逆流を起こし易く, その結果 pseudo NPHを呈し易いと考えられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.24.361 |