栄養状態によるアルブミン合成の調節機構に関する研究 平成22年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞

血清アルブミンは栄養状態の評価に利用される代表的なマーカーである。アルブミン合成の調節において, 食事は最も重要な因子の一つである。アルブミン遺伝子の転写活性がタンパク質栄養状態の影響をうけることが知られており, 我々はアミノ酸供給によるアルブミン遺伝子発現の調節が, ビタミンB6誘導体ピリドキサール5′-リン酸 (PLP) の細胞内濃度変化を介していることを見出した。PLPが転写調節因子に直接結合することでアルブミン遺伝子の転写活性に影響を及ぼす可能性を示唆する。一方, 絶食に伴うアルブミン合成の抑制には, 遺伝子転写後調節が深く関与している。我々はRNA結合タンパク質の一つであるPolyp...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 64; no. 4; pp. 215 - 219
Main Author 桑波田, 雅士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本栄養・食糧学会 2011
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ISSN0287-3516
1883-2849
DOI10.4327/jsnfs.64.215

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Summary:血清アルブミンは栄養状態の評価に利用される代表的なマーカーである。アルブミン合成の調節において, 食事は最も重要な因子の一つである。アルブミン遺伝子の転写活性がタンパク質栄養状態の影響をうけることが知られており, 我々はアミノ酸供給によるアルブミン遺伝子発現の調節が, ビタミンB6誘導体ピリドキサール5′-リン酸 (PLP) の細胞内濃度変化を介していることを見出した。PLPが転写調節因子に直接結合することでアルブミン遺伝子の転写活性に影響を及ぼす可能性を示唆する。一方, 絶食に伴うアルブミン合成の抑制には, 遺伝子転写後調節が深く関与している。我々はRNA結合タンパク質の一つであるPolypyrimidine tract-binding protein (PTB) がアルブミンmRNAのコード領域に結合し, 翻訳反応を抑制することを見出した。アルブミンmRNA-PTB複合体形成量の変化が, 絶食時におけるアルブミン合成の調節に関与する可能性を示唆する。
ISSN:0287-3516
1883-2849
DOI:10.4327/jsnfs.64.215