X線CT値からみた大脳白質の加齢性変化

脳卒中の既往がなく, 診察及び頭部X線CTにて中枢神経系に異常を認めなかった成人70例 (男29例, 女41例, 30歳から94歳, 平均年齢61.3歳) を対象とし深部白質及び視床のX線CT値を測定することにより, 大脳白質及び視床の加齢性変化につき検討した. この際, 頭蓋の大きさ及び頭蓋骨CT値の影響を考慮し, 年齢, 頭蓋の大きさ, 及び, 頭蓋骨CT値を説明変数とし深部白質及び視床のCT値を目的変数として重回帰分析を行い検討した. また視床および深部白質CT値と大脳萎縮度, 高血圧および糖尿病との関係についても検討を行った. 「結果」: 30歳から94歳までの70例において側脳室前角...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 26; no. 1; pp. 19 - 25
Main Authors 恒松, 徳五郎, 小林, 祥泰, 小出, 博巳, 福田, 準, 下手, 公一, 山口, 修平, 岡田, 和悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.01.1989
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.26.19

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Summary:脳卒中の既往がなく, 診察及び頭部X線CTにて中枢神経系に異常を認めなかった成人70例 (男29例, 女41例, 30歳から94歳, 平均年齢61.3歳) を対象とし深部白質及び視床のX線CT値を測定することにより, 大脳白質及び視床の加齢性変化につき検討した. この際, 頭蓋の大きさ及び頭蓋骨CT値の影響を考慮し, 年齢, 頭蓋の大きさ, 及び, 頭蓋骨CT値を説明変数とし深部白質及び視床のCT値を目的変数として重回帰分析を行い検討した. また視床および深部白質CT値と大脳萎縮度, 高血圧および糖尿病との関係についても検討を行った. 「結果」: 30歳から94歳までの70例において側脳室前角近傍の前頭葉白質及び側脳室体部レベルの前頭葉白質のCT値と年齢との間に有意な負相関が得られた. また30歳から65歳までの若年群41例に於いては右視床CT値および視床の両側半球平均CT値と年齢との間にのみ有意な負相関がみられたが, 66歳から94歳までの高年群29例に於ては視床及び深部白質の全部位において有意な負相関が認められた. 中枢神経系に異常を認めない成人においても老年期に至れば加齢とともに深部白質のCT値が低下する事が示された. 木谷らの脳萎縮指数 (BAI) と視床及び深部白質CT値との関係に付き検討した結果, 全ての部位でBAIと視床及び深部白質CT値との間に有意な正相関が認められた. すなわち脳萎縮の進行とともにCT値が低くなることが示され, 大脳萎縮に深部白質のCT値の低下が関与する可能性が示唆された. 高血圧及び糖尿病の有無でCT値に差は認められなかった.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.26.19