痴呆に対するデイ・ケアの効果及び任意選択性作業療法の比較検討
痴呆の非薬物療法については様々な療法の有効性が検討されてきているが, 対照群をおいて比較検討したものは少ない. 本研究では高齢者総合的機能評価を用い, ケアサービスの相違 (在宅生活でデイ・ケア利用者, 在宅で介護サービスを利用しながら外出のない者, 施設生活のみの者) により, ADL, 意欲, うつ, 認知能, 問題行動の一年間の変化を測定した. デイ・ケア利用者ではADLに関する意欲低下が見られず, 問題行動が有意に改善したことから, 非薬物療法の一つとしてのデイ・ケア利用の有用性が示唆された. またデイ・ケアにおける任意選択性作業療法 (運動, 園芸, 買い物・調理) を通常のデイ・ケ...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 42; no. 1; pp. 83 - 89 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.01.2005
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.42.83 |
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Summary: | 痴呆の非薬物療法については様々な療法の有効性が検討されてきているが, 対照群をおいて比較検討したものは少ない. 本研究では高齢者総合的機能評価を用い, ケアサービスの相違 (在宅生活でデイ・ケア利用者, 在宅で介護サービスを利用しながら外出のない者, 施設生活のみの者) により, ADL, 意欲, うつ, 認知能, 問題行動の一年間の変化を測定した. デイ・ケア利用者ではADLに関する意欲低下が見られず, 問題行動が有意に改善したことから, 非薬物療法の一つとしてのデイ・ケア利用の有用性が示唆された. またデイ・ケアにおける任意選択性作業療法 (運動, 園芸, 買い物・調理) を通常のデイ・ケア利用者を対照群として開始前, 1カ月, 2カ月を比較したところ, 有意に改善したのはADLについては運動の1カ月 (P<0.05), 認知能で園芸の2カ月 (P<0.05) とコントロール群の1カ月 (P<0.05), 問題行動は買い物・調理の1カ月, 2カ月の双方 (P<0.05) であった. これらから作業療法の種類によって改善項目に差があることが示唆された. また認知能の4群の群間比較では1カ月, 2カ月とも有意な差は見られず, どの治療法が特に有効ということはなかった. 総合的機能評価を行うことにより, 作業療法対象の改善すべき問題点 (ニーズ) が的確に把握され, それに応じた非薬物療法の組み合わせを処方することによって, ADL, 認知, 問題行動などが改善できる可能性が示唆された. また今回の任意選択性においてもなお認知能, 問題行動の改善に個人差が見られ, この点についても今後の検討課題と思われる. 老年科医は, 各行動療法の効果の比較や個人差の検討について, 縦断的客観比較研究方法の普及と実行を担って行く必要がある. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.42.83 |