高齢者(75歳以上)に対するセメントレス人工股関節置換術の有用性
セメントレス人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty以下THA)は変形性股関節症に対する一治療法として確立されている手術法である.しかし,侵襲の大きい手術方法であり,高齢者においても安全に手術が行えるのか,安定した初期固定が獲得されるのか,術直後あるいは長期的な経過で歩行は獲得されるのかなど懸念要素が多い.大腿骨頚部骨折に行った人工骨頭置換術症例との臨床成績の比較を中心にセメントレスTHAの有用性について調査した.当科にてセメントレスTHAを施行した75歳以上の133関節を対象とした.X線学的評価では,Enghの分類に従いimplant別の生物学的固定,stress sh...
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| Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 69; no. 4; pp. 338 - 347 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
昭和大学学士会
2009
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI | 10.14930/jsma.69.338 |
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| Summary: | セメントレス人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty以下THA)は変形性股関節症に対する一治療法として確立されている手術法である.しかし,侵襲の大きい手術方法であり,高齢者においても安全に手術が行えるのか,安定した初期固定が獲得されるのか,術直後あるいは長期的な経過で歩行は獲得されるのかなど懸念要素が多い.大腿骨頚部骨折に行った人工骨頭置換術症例との臨床成績の比較を中心にセメントレスTHAの有用性について調査した.当科にてセメントレスTHAを施行した75歳以上の133関節を対象とした.X線学的評価では,Enghの分類に従いimplant別の生物学的固定,stress shieldingの発生率を調査した.使用機種は多岐に亘っていたが,機種別に生物学的固定に差は認めなかった.また96%はbone ingrowth fixation,残りの4%はfibrous fixationで明らかなimplantのlooseningを示す所見はなく,再置換手術を要する症例はなかった.使用機種別ではAMLで高率にstress shieldingを認めていた.これは,大腿骨遠位部にて強固な固定が獲得される分,近位の骨皮質の委縮が著明となるが,臨床上問題となった症例はなかった.Stress shieldingの発生は,12mm以上の太いstem使用症例,canal-flare index3未満症例,cortical index0.4未満症例に多く認めた.髄腔形態の広い症例では骨質維持の加療を行い,極力骨温存可能なstemを選択すべきと考えられる.臨床成績の評価として術後1年,5年経過時の外来受診のフォローアップ率・死亡率,退院時,術後5年経過時の歩行状態についてTHA,Monopolar,Bipolarの3群間で検討した.Monopolar,Bipolarの2群間では明らかな有意差は認めなかった.THA群では,他の2群間と比較し外来受診のフォローアップ率,生存率は高く,また退院直後では約90%の患者に独歩あるいは杖歩行が獲得されていた.また,日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA score)の評価項目である疼痛,ADLから判断すると疼痛は著明な改善を認め,ADLも術前以上のパフォーマンスが得られている.重篤な合併症もなく,セメントレスTHAは比較的良好であり有効な手段と考えられる. |
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| ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
| DOI: | 10.14930/jsma.69.338 |