内視鏡的粘膜切除術後胃潰瘍の治癒過程の解析 特にHelicobacter pylori感染の影響について

最近, 早期胃癌や異型上皮 (ATP) に対して内視鏡的粘膜切除術 (Endoscopic resection;ER) が積極的に施行されており, 本法施行後に直径10-30mmの粘膜下層に達する潰瘍が発生するが, 今回われわれは, その治癒過程を慢性活動性胃炎や消化性潰瘍に深く関与しているとされるHelicobacter pylori (H. Pylori) 感染の有無から検討した.対象は, 順天堂大学消化器内科でERを施行された早期胃癌またはATP45例である. これらの症例に対してinformed consentを得た上でERを施行し, ER前3日後2週間後2カ月後に内視鏡的検査を施行し...

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Published in順天堂医学 Vol. 40; no. 4; pp. 423 - 428
Main Author OHKURA, RYUlCHI
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 16.03.1995
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.40.423

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Summary:最近, 早期胃癌や異型上皮 (ATP) に対して内視鏡的粘膜切除術 (Endoscopic resection;ER) が積極的に施行されており, 本法施行後に直径10-30mmの粘膜下層に達する潰瘍が発生するが, 今回われわれは, その治癒過程を慢性活動性胃炎や消化性潰瘍に深く関与しているとされるHelicobacter pylori (H. Pylori) 感染の有無から検討した.対象は, 順天堂大学消化器内科でERを施行された早期胃癌またはATP45例である. これらの症例に対してinformed consentを得た上でERを施行し, ER前3日後2週間後2カ月後に内視鏡的検査を施行し, 各回潰瘍の状態を観察し, 生検組織を培養してH. pylori感染の有無を確認した.ER3日後にはすべての潰瘍はAステージに留まっていたが, 2カ月後にはH. pylori感染の有無に関わらずすべて瘢痕治癒した. ER前にH. pylori陽性であった15例と陰性であた28例を比較検討したが, 両者ともにER2カ月後には全例瘢痕化して治癒速度に有意な差は見られなかった. さらに6カ月経過観察した症例において, 再発は一例も見られなかった. また, ER前のH. pylori陽性率は34.1%であったが, その後, 徐々に陽性率は上昇しER2カ月には46.2%に, 6カ月後には65.4%に達した. 特に潰瘍周辺部における陽性率の上昇が目立った. 以上から, H. pylori感染はER後に生じた胃潰瘍の治癒過程になんら影響しないと考えられた. また, H. pylori感染率はER後, 徐々に上昇する傾向にあった.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.40.423