非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)

免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)によるがん免疫療法は進行非小細胞肺がんの治療を大きく変える役割を果たした.従来の細胞障害性薬剤を用いた化学療法をしのぐ免疫チェックポイント阻害剤の最大の臨床的有用性は長期生存が得られることであり,抗PD-1 (programmed cell death 1)抗体治療を受けた進行非小細胞肺がん患者の中には5年あるいはそれ以上の長期にわたって生存している患者もいる.免疫チェックポイント阻害剤はもっと早い時期の非小細胞肺がんに対しても,手術や放射線治療と組み合わせると有効な可能性がある.最近報告された臨床試験においては,化学放射線療法後にPD-1のリガンドである...

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Published inJournal of UOEH Vol. 40; no. 2; pp. 173 - 189
Main Authors 田中, 文啓, 米田, 和恵, 今西, 直子, 市来, 嘉伸
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.06.2018
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.40.173

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Summary:免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)によるがん免疫療法は進行非小細胞肺がんの治療を大きく変える役割を果たした.従来の細胞障害性薬剤を用いた化学療法をしのぐ免疫チェックポイント阻害剤の最大の臨床的有用性は長期生存が得られることであり,抗PD-1 (programmed cell death 1)抗体治療を受けた進行非小細胞肺がん患者の中には5年あるいはそれ以上の長期にわたって生存している患者もいる.免疫チェックポイント阻害剤はもっと早い時期の非小細胞肺がんに対しても,手術や放射線治療と組み合わせると有効な可能性がある.最近報告された臨床試験においては,化学放射線療法後にPD-1のリガンドであるPD-L1 (programmed death ligand 1)に対する抗体を用いて地固め療法を行うことによって,局所進行非小細胞肺がん患者の無増悪生存を有意に延長することが示された.しかしながら現行の抗PD-1やPD-L1抗体単剤の治療では,ほんの少数の一部の患者にしか生存期間の延長が認められない.腫瘍細胞のPD-L1発現状況が免疫チェックポイント阻害剤の効果を予測するバイオマーカーとして認可されてはいるけれども,それだけで免疫チェックポイント阻害剤を使う患者を十分に選択することはできないのが現状である.治療効果をさらに高めるためには,PD-L1以外の新しいバイオマーカーの開発が不可欠である.これに加えて,PD-1/PD-L1阻害との併用療法も期待される戦略であり,免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用などのさまざまの組み合わせが現在進行中の臨床試験で検討されている.本稿では,免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法の現況と将来展望につきレビューを行い議論する.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.40.173