Endoscopic Modified Medial Maxillectomy(EMMM)アプローチでの嚢胞の摘出が有用であった鼻涙管外側に位置する術後性上顎嚢胞症例
術後性副鼻腔嚢胞は発生部位や周囲臓器との位置関係に非常にバリエーションが多く,斜視鏡を用いても視野がとれずに手術操作が困難となる症例が存在する。近年,このような症例に対してEndoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)の有用性が報告されている。今回,われわれは鼻涙管外側に位置する小さな術後性上顎嚢胞に対して,嚢胞の開窓を行ったが再閉塞をきたしたため,EMMMによる嚢胞摘出にて治療し得た1例を経験した。症例は64歳女性で,右頬部痛を主訴に来院した。20歳時に両側歯齦部からの上顎洞手術を受けていた。CTで下鼻道に接する直径20mmの嚢胞病変および,鼻涙管...
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Published in | 日本鼻科学会会誌 Vol. 56; no. 1; pp. 7 - 11 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本鼻科学会
2017
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Subjects | |
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ISSN | 0910-9153 1883-7077 |
DOI | 10.7248/jjrhi.56.7 |
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Summary: | 術後性副鼻腔嚢胞は発生部位や周囲臓器との位置関係に非常にバリエーションが多く,斜視鏡を用いても視野がとれずに手術操作が困難となる症例が存在する。近年,このような症例に対してEndoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)の有用性が報告されている。今回,われわれは鼻涙管外側に位置する小さな術後性上顎嚢胞に対して,嚢胞の開窓を行ったが再閉塞をきたしたため,EMMMによる嚢胞摘出にて治療し得た1例を経験した。症例は64歳女性で,右頬部痛を主訴に来院した。20歳時に両側歯齦部からの上顎洞手術を受けていた。CTで下鼻道に接する直径20mmの嚢胞病変および,鼻涙管の外側,眼窩下神経の内側に接する直径10mmの嚢胞病変を認めた。初回手術は,局所麻酔下に下鼻道に接する嚢胞の開放を行った。一時的に痛みは消失したが,8か月後に疼痛が再燃したため,全身麻酔下にナビゲーションを併用し,鼻涙管外側の骨性嚢胞壁をドリルで削開し中鼻道に開窓した。嚢胞開窓部には中鼻道の粘骨膜弁を落とし込み,再狭窄の予防としたが,1か月後に症状の再燃を認めた。再度ナビゲーションを併用しEMMMで嚢胞の完全摘出を行った。術後19か月目の時点で,再発は認めていない。鼻涙管外側の小さな骨性嚢胞に対するEMMMでの嚢胞壁の完全摘出の有用性が示唆された。 |
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ISSN: | 0910-9153 1883-7077 |
DOI: | 10.7248/jjrhi.56.7 |