がん薬物療法とDrug Delivery System:レンバチニブ内包ナノファイバーシートの開発

がん治療法の多様化が進み,従来の三大療法(外科的療法,化学療法,放射線療法)に加え,免疫チェックポイント阻害剤や光免疫療法などが臨床応用されている.これにより,がん患者の治療成績は向上しているが,副作用のため有効な治療を受けられない患者も存在し,新たながん治療戦略の構築が求められている.今後もがん治療法の多様化はさらに進むと考えられ,新規Drug Delivery System(DDS)の開発が不可欠である.筆者らは,エレクトロスピニング法を用いて化学療法薬を徐放するナノファイバーシートを開発し,薬剤の持続的な放出による抗腫瘍効果を肝細胞癌の異種移植モデルを用いて検討した.DDSの目的は薬物が...

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Published in関西医科大学雑誌 Vol. 75; pp. 1 - 5
Main Authors 荏原, 充宏, 関本, 貢嗣, 八田, 雅彦, 小坂, 久, 石塚, まりこ, 海堀, 昌樹, 松井, 康輔, 住山, 房央, 吉田, 明史, 藤澤, 七海
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 関西医科大学医学会 2024
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ISSN0022-8400
2185-3851
DOI10.5361/jkmu.75.1

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Summary:がん治療法の多様化が進み,従来の三大療法(外科的療法,化学療法,放射線療法)に加え,免疫チェックポイント阻害剤や光免疫療法などが臨床応用されている.これにより,がん患者の治療成績は向上しているが,副作用のため有効な治療を受けられない患者も存在し,新たながん治療戦略の構築が求められている.今後もがん治療法の多様化はさらに進むと考えられ,新規Drug Delivery System(DDS)の開発が不可欠である.筆者らは,エレクトロスピニング法を用いて化学療法薬を徐放するナノファイバーシートを開発し,薬剤の持続的な放出による抗腫瘍効果を肝細胞癌の異種移植モデルを用いて検討した.DDSの目的は薬物が生体に与える影響を最適化することであり,「吸収制御型」,「放出制御型」,「ターゲティング型」の3つの分野で開発が進んできた.がん化学療法におけるDDSは,がん組織に選択的に抗がん薬を届けることで薬剤の効果を最大限に引き出し,副作用を最小限に抑えるために重要な技術である.本稿では,がん治療における放出制御型DDSの新たな可能性について,私たちの研究成果を中心に概説する.
ISSN:0022-8400
2185-3851
DOI:10.5361/jkmu.75.1