がん遺伝子診断における遺伝情報開示後の心理・社会的側面

近年の分子遺伝学の発展は, 遺伝性腫瘍のリスクの評価にも重要な変化をもたらしており, まだ症状が顕在化していない者に対しても, 遺伝性疾患の可能性についての情報を提供できるようになってきた. しかしこうした技術の進歩の反面, 遺伝子診断がもたらす心理・社会的影響については, わが国においてはこれまであまり関心が向けられてこなかった. このため, 遺伝子診断が及ぼす心理・社会的影響は未知数であり, 遺伝に関する情報をどのように提供し, その後の支援をどのように行っていくかということについての指針も現在のところない. 本論文ではまず, 遺伝カウンセリングが与える心理・社会的影響および遺伝子検査の結...

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Published in医療 Vol. 57; no. 6; pp. 395 - 399
Main Author 岡村, 仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.06.2003
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.57.395

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Summary:近年の分子遺伝学の発展は, 遺伝性腫瘍のリスクの評価にも重要な変化をもたらしており, まだ症状が顕在化していない者に対しても, 遺伝性疾患の可能性についての情報を提供できるようになってきた. しかしこうした技術の進歩の反面, 遺伝子診断がもたらす心理・社会的影響については, わが国においてはこれまであまり関心が向けられてこなかった. このため, 遺伝子診断が及ぼす心理・社会的影響は未知数であり, 遺伝に関する情報をどのように提供し, その後の支援をどのように行っていくかということについての指針も現在のところない. 本論文ではまず, 遺伝カウンセリングが与える心理・社会的影響および遺伝子検査の結果を伝えられた後の心理・社会的側面について検討したこれまでの研究を概説した. 次いで, hereditary nonpolyposis colon cancer (HNPCC)とfamilial adenomatous polyposis (FAP)に関する遺伝子検査の結果開示が与える短期的および長期的な心理・社会的影響を評価するための, わが国における多施設共同研究について報告した.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.57.395