皮下組織から筋組織にかけての線維化による胸郭運動制限のため,換気不全を来した筋膜炎-脂肪織炎症候群(Fasciitis Panniculitis Syndrome)(FPS)の一症例

症例は72歳女性.1986年,頚~胸部の強皮症様皮膚所見,筋萎縮,血清CK値上昇のため他科にて筋生検施行し,多発性筋炎と診断された.ステロイド治療にて血清CK値は低下したが皮膚所見,筋萎縮はその後も進行し大胸筋,傍脊柱筋,大腿筋部に及んだ. 1997年,呼吸筋萎縮,胸郭運動制限による換気不全のためCO2ナルコーシスとなり入院中に呼吸停止した.皮膚から筋組織にかけての生検組織所見では著明な筋線維の萎縮,皮下脂肪組織の葉間結合織と筋膜の線維化肥厚,慢性炎症を認め,筋膜炎-脂肪織炎症候群(Fasciitis Panniculitis Syndrome: FPS)と診断された.シメチジン,メトトレキサ...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 24; no. 1; pp. 36 - 42
Main Authors 浅沼, ゆう, 阿部, 光文, 上原, 立子, 市川, 陽一, 鈴木, 康夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本臨床免疫学会 2001
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.24.36

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Summary:症例は72歳女性.1986年,頚~胸部の強皮症様皮膚所見,筋萎縮,血清CK値上昇のため他科にて筋生検施行し,多発性筋炎と診断された.ステロイド治療にて血清CK値は低下したが皮膚所見,筋萎縮はその後も進行し大胸筋,傍脊柱筋,大腿筋部に及んだ. 1997年,呼吸筋萎縮,胸郭運動制限による換気不全のためCO2ナルコーシスとなり入院中に呼吸停止した.皮膚から筋組織にかけての生検組織所見では著明な筋線維の萎縮,皮下脂肪組織の葉間結合織と筋膜の線維化肥厚,慢性炎症を認め,筋膜炎-脂肪織炎症候群(Fasciitis Panniculitis Syndrome: FPS)と診断された.シメチジン,メトトレキサートの追加併用により皮膚,筋症状, MRI画像所見の改善が得られ,人工呼吸器管理より離脱し退院となった. FPSは好酸球性筋膜炎を包括する病理組織学的概念でNaschitzらにより提唱された.本症例のごとく重篤な経過をたどる場合もあり,早期診断治療が重要であると考え報告する.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.24.36