酸性溶液における黄鉄鉱の酸化溶解の不定比性

pH2近傍の塩酸溶液におけるFe(III)イオンによる黄鉄鉱(FeS2)の酸化溶解の不定比性について,吸光光度法及びICP-AESによる溶液分析とX線光電子分光法(XPS)による表面分析を併用して検討した.その結果,Feに優先的な不定比的溶解が起こること,そのためFeS2の表面はS化学種に富んだ層に変化していくことを見いだした.又,この不定比性は初期のFe(III)イオン添加濃度の増大に伴い促進されることが分かった.従って本研究の結果は,従来の化学量論的溶解の概念では説明できない.更に,FeS2の溶解速度は,Clイオン濃度にはほとんど無関係であるのに対し,Fe(II)イオン濃度が増すに従い低下...

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Published in分析化学 Vol. 43; no. 11; pp. 911 - 917
Main Authors 笹木, 圭子, 恒川, 昌美, 金野, 英隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.11.1994
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.43.911

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Summary:pH2近傍の塩酸溶液におけるFe(III)イオンによる黄鉄鉱(FeS2)の酸化溶解の不定比性について,吸光光度法及びICP-AESによる溶液分析とX線光電子分光法(XPS)による表面分析を併用して検討した.その結果,Feに優先的な不定比的溶解が起こること,そのためFeS2の表面はS化学種に富んだ層に変化していくことを見いだした.又,この不定比性は初期のFe(III)イオン添加濃度の増大に伴い促進されることが分かった.従って本研究の結果は,従来の化学量論的溶解の概念では説明できない.更に,FeS2の溶解速度は,Clイオン濃度にはほとんど無関係であるのに対し,Fe(II)イオン濃度が増すに従い低下することが分かった.このことは,FeS2の溶解速度式はFeとSの両方の化学種を考慮して求められるべきであることを示す.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.43.911