左TKA 施行患者の歩容改善に着目した一症例 CKC トレーニングを用いて

【目的】今回、左人工膝関節全置換術(以下、TKA)後、歩容の変化が見られなかった症例を担当し、CKC トレーニングを用いた運動学習を中心に治療を行い、歩容の改善に繋がったため報告する。【症例紹介】症例は70 代女性で、両変形性膝関節症(以下、OA)の診断を受けた症例。術式はTKA でCR 型を採用された。本症例のdemand は「しっかりと治して帰りたい」であり、Need として歩容の改善とした。【経過】術前評価では左膝の内側部に荷重時痛が強く見られていた。また、大腿周径の膝蓋骨直上から5cm 上は左で1.5cm 低下していた。ROM は膝関節伸展-10°であった。術前の歩容は、左IC・LR...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 100
Main Authors 有福, 浩二, 篠原, 晶子, 池田, 章子, 上妻, 大士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2021
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2021.0_100

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Summary:【目的】今回、左人工膝関節全置換術(以下、TKA)後、歩容の変化が見られなかった症例を担当し、CKC トレーニングを用いた運動学習を中心に治療を行い、歩容の改善に繋がったため報告する。【症例紹介】症例は70 代女性で、両変形性膝関節症(以下、OA)の診断を受けた症例。術式はTKA でCR 型を採用された。本症例のdemand は「しっかりと治して帰りたい」であり、Need として歩容の改善とした。【経過】術前評価では左膝の内側部に荷重時痛が強く見られていた。また、大腿周径の膝蓋骨直上から5cm 上は左で1.5cm 低下していた。ROM は膝関節伸展-10°であった。術前の歩容は、左IC・LR 期では足底接地、Mst 期ではKnee in toe out、膝・股関節・体幹は屈曲位をとり、Mst・Tst 期では立脚時間が短縮、Psw 期では蹴り出しの消失が見られた。術後から1 週間は炎症が強く膝蓋骨直上で周径差が左で3cm 増加しており、膝関節屈曲・伸展可動域は90° /-5°、膝伸展筋力のMMT は2 であった。炎症は術後2 週あたりから落ち着き始め、それに伴い膝関節屈曲・伸展可動域は110° /0°、膝伸展筋力のMMT4 と向上が見られた。術後3 週目になると杖歩行の練習を開始した。この時の10m 歩行は、23.6 秒、18 歩だった。手術によってFTA が改善され、荷重時の疼痛が改善したにも関わらず術前の歩容と変化がなく、左IC・LR 期では足底接地、Mst 期ではKnee in toe out、膝・股関節・体幹は屈曲位をとり、Mst・Tst 期では立脚時間短縮、Psw 期では蹴り出しの消失が残存していた。これに対して、歩容改善を目的に理学療法プログラムを検討した。まずは座位で膝正中位にコントロールする意識付けのバランスボール蹴り、平行棒内立位で膝正中位での膝・股関節・体幹伸展練習、踏み返し練習等のCKC を意識した運動学習を重点的に進めた。また、リハビリ以外の時間も筋力運動などの自主練習メニューを作成し、積極的に取り組んでもらうことができた。結果、歩容は左IC 期に踵接地が出現し、Mst 期では膝正中位での荷重可能となり、膝・股関節・体幹伸展保持可能、Tst 期では立脚時間が延長した。Psw期では蹴り出しの出現が見られるようになった。非術側はOA の影響が大きく、外側スラストが出現したが外側ウェッジを使用してスラスト軽減を図った。歩容が安定したことによって10 m歩行も独歩で10.6 秒、17 歩と歩行能力の改善にも繋がり退院の運びとなった。【考察】本症例は術前よりKnee in toe out の歩容を呈し、内側広筋の筋力低下が見られた。この時のKnee in toe out は荷重時の膝内反ストレスによる内側列隙狭小化によって引き起こされる疼痛を逃避するためにKnee in の位置で荷重していたと考えられた。TKA 後もKnee in toe out は残存していたが、この時の問題点は術前の悪い歩容の習慣化、内側広筋筋力低下、体幹・股関節周囲筋力低下、足部コントロール不良が挙げられ、それらによって引き起こされる左下肢支持性低下が問題であると考えた。河村の報告(2010 年)によると、膝OA におけるCKC 運動の効果としてハムストリング筋活動が高まることで大腿四頭筋との同時収縮が膝関節を安定化し、また、ハムストリングは大腿直筋とともに下肢末端の剛性を高めるので、荷重立位時の姿勢の安定化に貢献するとされている。本症例においても、この支持性低下に対して、CKC を意識した理学療法プログラムにより、膝関節の安定化、荷重立位時の姿勢の安定性が向上したことでアライメント、歩容の改善に繋がったと考える。今後の課題として、非術側OA に対する介入をより早期から行う必要があったと考える。【倫理的配慮,説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき、発表の趣旨を十分に説明し、同意を得た。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2021.0_100