軸対称積雲モデルにおける雨滴の成長 第一部 微物理過程を詳しく取り扱ったモデルとパラメータ化したモデルとの比較

力学過程と微物理学的過程との相互作用を考慮した深い湿潤対流の軸対称モデルを用いて,暖かい海洋性積雲における雨滴の成長に関する数値シミュレーションを行った。水滴の成長に関わる微物理学的過程としては,凝結核への水蒸気凝結による雲粒の生成,水滴の水蒸気拡散による成長,併合,蒸発,落下,分裂が考慮されている。第一部では微物理過程を詳しく取り扱った雲モデルにおける水滴の扱い方が,結果,特に降水の側面と雲の全体的な振舞に及ぼす影響が調べられる。更に,微物理過程に関するBerryとKesslerのパラメタリゼーションの特徴が,水滴の成長過程を詳しく扱ったモデルとの比較において調べられている。 数値計算の結果...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 61; no. 4; pp. 629 - 655
Main Author 椎野, 純一
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 日本気象学会 1983
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ISSN0026-1165
2186-9057
DOI10.2151/jmsj1965.61.4_629

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Summary:力学過程と微物理学的過程との相互作用を考慮した深い湿潤対流の軸対称モデルを用いて,暖かい海洋性積雲における雨滴の成長に関する数値シミュレーションを行った。水滴の成長に関わる微物理学的過程としては,凝結核への水蒸気凝結による雲粒の生成,水滴の水蒸気拡散による成長,併合,蒸発,落下,分裂が考慮されている。第一部では微物理過程を詳しく取り扱った雲モデルにおける水滴の扱い方が,結果,特に降水の側面と雲の全体的な振舞に及ぼす影響が調べられる。更に,微物理過程に関するBerryとKesslerのパラメタリゼーションの特徴が,水滴の成長過程を詳しく扱ったモデルとの比較において調べられている。 数値計算の結果,水滴の扱い方は,雨滴の成長過程と雲の力学的振舞に,無視できない程の影響を与えることが示される。即ち,水滴のクラスの数が少いモデルでは,雲の様hな側面において物理的に意味のある本来の振舞iがゆがめられ,このため降水開始時刻が著しく早くなり,物理的に無意味な高い降水能率を評価してしまうことになる。こうした結果は水滴の粒径分布に与える数値計算上の人為的影響によってもたらされる。また,生成された雨水(雨滴)の粒径を常にMarshall-Palmer分布に仮定する上記のパラメタリゼーションを用いたモデルも,降水の開始と降水能率に対し同様な結果をもたらす。但しこれは上の場合と異って,特に雲の発達過程における雨滴の平均落下速度を,上記の仮定のため著しく過大評価することから起こっている。数値計算の結果はこれまでに得られているいくつかの研究結果と比較されている。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.61.4_629