腰部脊柱管狭窄症患者における術後急性期の Timed up and go test の変化に関連する因子の検討 O-035 骨関節・脊髄

【目的】 腰部脊柱管狭窄症(LSS)は、脊柱管の狭窄により腰部や臀部、下肢の痛みを引き起こす疾患である。LSSの治療については議論の余地があるとされており、治療選択のために予後予測が重要とされている。LSSを対象としても用いられる身体機能評価の1つにTimed up and go test(TUG)がある。TUGは外科分野で術後転帰と関連があり、運動器不安定症の診断基準にも含まれていることから、本研究では身体機能の代表値として採用した。また、Phase angle(PhA)は簡便に体組成を測定できる評価と注目されており、栄養やTUG、筋力などの身体機能との関連が報告されている。がん患者や維持透...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 35
Main Authors 松瀬, 博夫, 広田, 桂介, 中江, 一朗, 不動, 拓眞, 大坪, 亮太, 橋田, 竜騎, 平岡, 弘二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_35

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Abstract 【目的】 腰部脊柱管狭窄症(LSS)は、脊柱管の狭窄により腰部や臀部、下肢の痛みを引き起こす疾患である。LSSの治療については議論の余地があるとされており、治療選択のために予後予測が重要とされている。LSSを対象としても用いられる身体機能評価の1つにTimed up and go test(TUG)がある。TUGは外科分野で術後転帰と関連があり、運動器不安定症の診断基準にも含まれていることから、本研究では身体機能の代表値として採用した。また、Phase angle(PhA)は簡便に体組成を測定できる評価と注目されており、栄養やTUG、筋力などの身体機能との関連が報告されている。がん患者や維持透析患者においては予後との関連も報告されているが整形外科疾患患者の予後に関する報告は少ない。そこで本研究の目的はLSS患者の術後の身体機能の変化と栄養、PhA、疼痛との関連を調査することとした。【方法】 本研究は当院に2020年5月から2021年8月に入院したLSS患者から除外(体組成測定不能なもの、データ欠損例)を除いた114名(男性48名、女性66名)を対象とした後ろ向き研究である(承認番号:21052)。評価項目は術前のPhA、予後栄養指数(PNI)、腰部と下肢の疼痛(Visual Analog Scale(VAS))、身体機能として入院時、退院時のTUGから変化量(ΔTUG)を測定した。PhAの測定には、Inbody 770を使用した。解析は、JMP ProⓇ 15を使用し、ΔTUGに関連する因子の解析に重回帰分析を行い、説明変数には年齢、性別、Body Mass Index(BMI)、PNI、腰部と下肢のVASをそれぞれ選択した。また、ΔTUGから改善あり群と改善群に分け、重回帰分析と同様の変数を使用して決定木解析を行った。【結果】 ΔTUGに関連する重回帰分析の結果はPhAが独立因子として選択された。(P=0.0478)。また、決定木解析の結果はΔTUGに関連する因子の第1分岐は下肢のVASであった。下肢のVASが72 ㎜以上の患者では約81%がTUG改善群であった。下肢のVASが72 ㎜以上の患者の第2分岐はPhAであり、PhAが4.2°以下の患者は全例がTUG改善群であった。【考察】 本研究においてLSS術後患者におけるTUGの変化に影響を与える要因は下肢のVASとPhAであった。下肢痛に関する先行研究では、軽度の下肢痛を有するLSS患者において手術療法が有効と報告されているため、術前より重度の下肢痛を有する患者の予後は不良である可能性が示唆された。また、術後のTUGの変化とPhAで相関を認めた。他の疾患を対象とした先行研究と同様にLSS患者においてもPhAは予後を予測する可能性が示唆された。また、PhAのカットオフ値についての議論は十分にされていないが先行研究で健常アジア人のカットオフ値は6.55±1.10°、栄養指標としてのカットオフ値は男性5.0°、女性4.6°とされている。今回の決定木解析での4.2°での分岐はどちらのカットオフ値も下回っており、妥当な結果と考える。【結論】 本研究におけるLSS術後患者のTUGの変化に関連する因子として下肢のVASとPhAが選択された。LSS患者において術前のPhAは術後のTUGの変化と関係しており、予後を予測する可能性が示唆された。
AbstractList 【目的】 腰部脊柱管狭窄症(LSS)は、脊柱管の狭窄により腰部や臀部、下肢の痛みを引き起こす疾患である。LSSの治療については議論の余地があるとされており、治療選択のために予後予測が重要とされている。LSSを対象としても用いられる身体機能評価の1つにTimed up and go test(TUG)がある。TUGは外科分野で術後転帰と関連があり、運動器不安定症の診断基準にも含まれていることから、本研究では身体機能の代表値として採用した。また、Phase angle(PhA)は簡便に体組成を測定できる評価と注目されており、栄養やTUG、筋力などの身体機能との関連が報告されている。がん患者や維持透析患者においては予後との関連も報告されているが整形外科疾患患者の予後に関する報告は少ない。そこで本研究の目的はLSS患者の術後の身体機能の変化と栄養、PhA、疼痛との関連を調査することとした。【方法】 本研究は当院に2020年5月から2021年8月に入院したLSS患者から除外(体組成測定不能なもの、データ欠損例)を除いた114名(男性48名、女性66名)を対象とした後ろ向き研究である(承認番号:21052)。評価項目は術前のPhA、予後栄養指数(PNI)、腰部と下肢の疼痛(Visual Analog Scale(VAS))、身体機能として入院時、退院時のTUGから変化量(ΔTUG)を測定した。PhAの測定には、Inbody 770を使用した。解析は、JMP ProⓇ 15を使用し、ΔTUGに関連する因子の解析に重回帰分析を行い、説明変数には年齢、性別、Body Mass Index(BMI)、PNI、腰部と下肢のVASをそれぞれ選択した。また、ΔTUGから改善あり群と改善群に分け、重回帰分析と同様の変数を使用して決定木解析を行った。【結果】 ΔTUGに関連する重回帰分析の結果はPhAが独立因子として選択された。(P=0.0478)。また、決定木解析の結果はΔTUGに関連する因子の第1分岐は下肢のVASであった。下肢のVASが72 ㎜以上の患者では約81%がTUG改善群であった。下肢のVASが72 ㎜以上の患者の第2分岐はPhAであり、PhAが4.2°以下の患者は全例がTUG改善群であった。【考察】 本研究においてLSS術後患者におけるTUGの変化に影響を与える要因は下肢のVASとPhAであった。下肢痛に関する先行研究では、軽度の下肢痛を有するLSS患者において手術療法が有効と報告されているため、術前より重度の下肢痛を有する患者の予後は不良である可能性が示唆された。また、術後のTUGの変化とPhAで相関を認めた。他の疾患を対象とした先行研究と同様にLSS患者においてもPhAは予後を予測する可能性が示唆された。また、PhAのカットオフ値についての議論は十分にされていないが先行研究で健常アジア人のカットオフ値は6.55±1.10°、栄養指標としてのカットオフ値は男性5.0°、女性4.6°とされている。今回の決定木解析での4.2°での分岐はどちらのカットオフ値も下回っており、妥当な結果と考える。【結論】 本研究におけるLSS術後患者のTUGの変化に関連する因子として下肢のVASとPhAが選択された。LSS患者において術前のPhAは術後のTUGの変化と関係しており、予後を予測する可能性が示唆された。
Author 中江, 一朗
平岡, 弘二
広田, 桂介
不動, 拓眞
橋田, 竜騎
大坪, 亮太
松瀬, 博夫
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  fullname: 松瀬, 博夫
  organization: 久留米大学 医学部 整形外科学講座
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  fullname: 広田, 桂介
  organization: 久留米大学病院 リハビリテーション部
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SubjectTerms TUG
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腰部脊柱管狭窄症
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Title 腰部脊柱管狭窄症患者における術後急性期の Timed up and go test の変化に関連する因子の検討
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