チューター活動における言語・文化学習の双方向性 留学生によることばの説明実践に着目して

本研究では,日本の大学におけるチューター活動に着目し,日本語学習者である外国人留学生がチューターにことばを説明する実践に焦点を当て,その実践に見られる連鎖上の特徴,使用された言語的・非言語的リソースや受け手の返答を分析した。約27時間の会話データを分析した結果,以下の特徴が見られた。(1)チューターによる質問,ことばの繰り返し,「知らない者(K-)」である認識的ステータスを表す発話やことば探しによって実践が開始することが観察された。(2)留学生が自分なりの説明を行うほか,日本語の概念との比較や英語への切り替えを通して説明を行っている。説明上の困難が生じた場合,受け手であるチューターが他者修復を...

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Published in言語文化教育研究 Vol. 21; pp. 74 - 97
Main Author 李, 頌雅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 言語文化教育研究学会:ALCE 23.12.2023
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ISSN2188-9600
DOI10.14960/gbkkg.21.74

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Summary:本研究では,日本の大学におけるチューター活動に着目し,日本語学習者である外国人留学生がチューターにことばを説明する実践に焦点を当て,その実践に見られる連鎖上の特徴,使用された言語的・非言語的リソースや受け手の返答を分析した。約27時間の会話データを分析した結果,以下の特徴が見られた。(1)チューターによる質問,ことばの繰り返し,「知らない者(K-)」である認識的ステータスを表す発話やことば探しによって実践が開始することが観察された。(2)留学生が自分なりの説明を行うほか,日本語の概念との比較や英語への切り替えを通して説明を行っている。説明上の困難が生じた場合,受け手であるチューターが他者修復を行い,それを手助けとして利用し,留学生が説明を完成させることが見られた。(3)留学生がことばの説明実践を通して,自身の専門分野や国の社会文化に対してエキスパート性を示している。一方,チューターは説明の受け手として参与し,その説明を支持することが観察された。留学生によることばの説明実践では,新参者(novice)と熟達者(expert)の位置付けの流動性が見られる。つまり,ことばの説明実践は言語・文化学習の双方向性を可能にする実践だと考えられる。
ISSN:2188-9600
DOI:10.14960/gbkkg.21.74