治療効果モデルの最近の発展

  近年, 医療分野では, リアルワールド・データに代表されるビッグデータの利活用が注目されている. 本稿において焦点を当てる2治療間のアウトカムの差 (治療効果) を評価するとき, 最も有名な臨床研究デザインの一つが無作為化比較試験 (RCT) である. RCTでは, 平均治療効果が評価されるものの, すべての被験者が同一の治療効果が得られるとは限らない. そのため, 近年では, 共変量 (例:背景情報) で条件づけられた治療効果 (異質性治療効果) を推定するための治療効果モデルの研究が統計科学・機械学習の分野で積極的に研究されている.   統計科学・機械学習の分野では, 重複している研究...

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Published in計算機統計学 Vol. 37; no. 2; pp. 113 - 164
Main Author 下川 敏雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本計算機統計学会 2024
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ISSN0914-8930
2189-9789
DOI10.20551/jscswabun.37.2_113

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Summary:  近年, 医療分野では, リアルワールド・データに代表されるビッグデータの利活用が注目されている. 本稿において焦点を当てる2治療間のアウトカムの差 (治療効果) を評価するとき, 最も有名な臨床研究デザインの一つが無作為化比較試験 (RCT) である. RCTでは, 平均治療効果が評価されるものの, すべての被験者が同一の治療効果が得られるとは限らない. そのため, 近年では, 共変量 (例:背景情報) で条件づけられた治療効果 (異質性治療効果) を推定するための治療効果モデルの研究が統計科学・機械学習の分野で積極的に研究されている.   統計科学・機械学習の分野では, 重複している研究も多く, そのなかには, 同じ手法であるものの, 異なる用語で呼ばれているものが散見される. 本稿では, 治療効果モデルを体系的に整理するとともに, 各手法について概説した. また, 実際の臨床試験データへの応用を通じてその有用性と適用上の留意点について検討した.
ISSN:0914-8930
2189-9789
DOI:10.20551/jscswabun.37.2_113