肝膿瘍と鑑別に難渋したC型肝炎に併発した肉腫様肝癌の1例

症例は慢性C型肝炎の既往を有する68歳の男性で, 2006年1月頃より弛張熱と右側胸部痛が出現し近医を受診した. 腹部超音波検査で肝右葉に6センチ大の腫瘤を指摘され当院へ紹介となった. 腹部CTでは肝後区域に直径6センチのring enhancementを有する単発性腫瘤を認めた. 肝膿瘍と診断し経皮経肝膿瘍ドレナージを施行, 灰白色の膿汁を排出した. ドレナージ後も炎症反応高値が遷延したため, 経皮的治療の限界と判断し肝部分切除術を施行した. 術後の病理組織学的検査では異型性を伴う類円形~短紡錘形の腫瘍細胞が充実性に増殖しており, 免疫組織染色ではVimentinとMIB-1に強陽性を示し,...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 40; no. 8; pp. 1490 - 1495
Main Authors 正木, 裕児, 上野, 隆, 秋山, 隆, 濱田, 博隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2007
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.40.1490

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Summary:症例は慢性C型肝炎の既往を有する68歳の男性で, 2006年1月頃より弛張熱と右側胸部痛が出現し近医を受診した. 腹部超音波検査で肝右葉に6センチ大の腫瘤を指摘され当院へ紹介となった. 腹部CTでは肝後区域に直径6センチのring enhancementを有する単発性腫瘤を認めた. 肝膿瘍と診断し経皮経肝膿瘍ドレナージを施行, 灰白色の膿汁を排出した. ドレナージ後も炎症反応高値が遷延したため, 経皮的治療の限界と判断し肝部分切除術を施行した. 術後の病理組織学的検査では異型性を伴う類円形~短紡錘形の腫瘍細胞が充実性に増殖しており, 免疫組織染色ではVimentinとMIB-1に強陽性を示し, かつ鍍銀染色では索状配列が保持されていた. なかでも, MIB-1標識率は80%を越え, 強い増殖能を有することをうかがわせた. 以上より, C型肝炎を背景に発生した肉腫様肝癌と診断した. 未治療の肝腫瘍, とりわけ肉腫様肝癌が肝膿瘍として発症することは極めてまれであり, 考察を加えて報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.40.1490