肝円索の異所性肝細胞より発生したと考えられる肝細胞癌の1例

症例は65歳の男性で, 高血圧にて近医通院加療中AFP高値を指摘され, 精査にて胃幽門前庭部IIc型異癌と肝左葉肝細胞癌の重複癌との診断に至った.開腹したところ, 肝左葉は萎縮していたが肝内には腫瘍は認めず, 直径5cmにも腫大した肝円索を腫瘤状に触知した.このため手術は肝円索腫瘍を含め肝左葉切除術および幽門側胃切除術を施行した.摘出標本を検索したところ肝円索腫瘍は肝とは連続性がなく, 肝円索に迷入した肝組織が癌化した異所性肝細胞癌であると診断した.異所性肝組織は胆嚢, 肝の支持靱帯, 後腹膜, 膵, 脾, 大網, 胸腔内などに存在し, これらも主肝と同様に硬変化, 癌化することがあるとされて...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 30; no. 5; pp. 1004 - 1008
Main Authors 大橋, 一夫, 中野, 博重, 小林, 経宏, 青松, 幸雄, 金, 達也, 中島, 祥介, 上野, 正義, 高, 済峯, 金廣, 裕道, 吉村, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1997
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.30.1004

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Summary:症例は65歳の男性で, 高血圧にて近医通院加療中AFP高値を指摘され, 精査にて胃幽門前庭部IIc型異癌と肝左葉肝細胞癌の重複癌との診断に至った.開腹したところ, 肝左葉は萎縮していたが肝内には腫瘍は認めず, 直径5cmにも腫大した肝円索を腫瘤状に触知した.このため手術は肝円索腫瘍を含め肝左葉切除術および幽門側胃切除術を施行した.摘出標本を検索したところ肝円索腫瘍は肝とは連続性がなく, 肝円索に迷入した肝組織が癌化した異所性肝細胞癌であると診断した.異所性肝組織は胆嚢, 肝の支持靱帯, 後腹膜, 膵, 脾, 大網, 胸腔内などに存在し, これらも主肝と同様に硬変化, 癌化することがあるとされている.異所性肝細胞癌は非常にまれではあるが, 本邦でこれまでに4例の報告があり, 文献的考察を加えた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.30.1004