食道憩室内の早期癌の1例

食道憩室に生じた癌の報告はまれである.われわれは中部食道憩室にみられた早期食道癌の1例を経験したので報告する.本例は食道憩室内癌本邦報告例の16例目である. 症例は68歳の男性で胸骨後部痛が持続するため当科に入院した.食道造影では気管分岐部より約4cm肛側のIm右側壁に1.5cm径の憩室があり, この憩室の後壁寄りに径約2cmの周堤様隆起を伴った陥凹を認めた.内視鏡検査にて門歯より約28cmの食道右側壁に憩室があり, 憩室内の口側後壁に不整形の陥凹病変を認め, 表在陥凹型食道癌と診断した.術前照射後, 食道亜全摘術施行.病理診断は低分化型扁平上皮癌で, sm, n (-), M0, Pl0,...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 23; no. 9; pp. 2264 - 2268
Main Authors 林, 也欽, 中田, 俊則, 田代, 和則, 古川, 正人, 城野, 英利, 草野, 敏臣, 渡部, 誠一郎, 糸瀬, 薫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1990
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.23.2264

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Summary:食道憩室に生じた癌の報告はまれである.われわれは中部食道憩室にみられた早期食道癌の1例を経験したので報告する.本例は食道憩室内癌本邦報告例の16例目である. 症例は68歳の男性で胸骨後部痛が持続するため当科に入院した.食道造影では気管分岐部より約4cm肛側のIm右側壁に1.5cm径の憩室があり, この憩室の後壁寄りに径約2cmの周堤様隆起を伴った陥凹を認めた.内視鏡検査にて門歯より約28cmの食道右側壁に憩室があり, 憩室内の口側後壁に不整形の陥凹病変を認め, 表在陥凹型食道癌と診断した.術前照射後, 食道亜全摘術施行.病理診断は低分化型扁平上皮癌で, sm, n (-), M0, Pl0, stage 0で早期癌であった.組織学的に, 憩室をとり囲むように癌が粘膜上皮下, 粘膜筋板, 粘膜下層に増殖し, 食道憩室内よりの発癌と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.23.2264