転位する「探偵小説家」と「読者」 江戸川乱歩『陰獣』とジャーナリズム
本稿では、一九三〇年前後の犯罪報道に用いられた「陰獣」という語が変態的な犯罪者を指す語として転用されていく過程に、『陰獣』を含めた同時期の探偵小説と、乱歩を中心とする探偵小説家の位相の変遷が関わっていたことを明らかにした。さらに、『陰獣』において探偵小説家・大江春泥を「犯罪者」として実体化していく「私」の在り様が、探偵小説家を現実の犯罪の「犯人」と同一視する探偵小説の読者と相同的なものであったことを指摘した。以上のことから、『陰獣』にはテクスト発表以降に顕在化するジャーナリズムと探偵小説ジャンルの連関が先駆的に描出されるとともに、そのテクストの流通プロセスが探偵小説のジャンル・イメージの生成動...
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          | Published in | 日本近代文学 Vol. 95; pp. 17 - 32 | 
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本近代文学会
    
        15.11.2016
     | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0549-3749 2424-1482  | 
| DOI | 10.19018/nihonkindaibungaku.95.0_17 | 
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| Summary: | 本稿では、一九三〇年前後の犯罪報道に用いられた「陰獣」という語が変態的な犯罪者を指す語として転用されていく過程に、『陰獣』を含めた同時期の探偵小説と、乱歩を中心とする探偵小説家の位相の変遷が関わっていたことを明らかにした。さらに、『陰獣』において探偵小説家・大江春泥を「犯罪者」として実体化していく「私」の在り様が、探偵小説家を現実の犯罪の「犯人」と同一視する探偵小説の読者と相同的なものであったことを指摘した。以上のことから、『陰獣』にはテクスト発表以降に顕在化するジャーナリズムと探偵小説ジャンルの連関が先駆的に描出されるとともに、そのテクストの流通プロセスが探偵小説のジャンル・イメージの生成動因としても作用していたことが明らかとなった。 | 
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| ISSN: | 0549-3749 2424-1482  | 
| DOI: | 10.19018/nihonkindaibungaku.95.0_17 |