原発性肝癌に対する無水エタノールを用いた術前門脈塞栓術の評価と予後の検討

【はじめに】原発性肝癌に対する手術適応の拡大のため術前門脈塞栓術が行われている. 今回は無水エタノールを塞栓物質として使用し, その効果と肝切除後の予後について検討した.【方法】1990年4月より99年10月までの間に, 1期的肝右葉切除の適応基準を満たさず術前門脈塞栓術 (PVE) 後に肝右葉切除以上の右葉系切除を施行した原発性肝癌14例 (肝細胞癌12例, 胆管細胞癌1例, 混合型肝癌1例) を対象とした. 検討項目はPVEによる血液生化学検査値と肝容積の変化, ならびに同時期のPVEを行わずに右葉切除を施行した肝細胞癌63例を対照とし長期予後を検討した.【結果】無水エタノールの投与量は1...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 34; no. 3; pp. 189 - 196
Main Authors 嶋村, 剛, 中川, 隆公, 松下, 通明, 倉内, 宣明, 清水, 匡, 神山, 俊哉, 中島, 保明, 藤堂, 省, 佐藤, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2001
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.34.189

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Summary:【はじめに】原発性肝癌に対する手術適応の拡大のため術前門脈塞栓術が行われている. 今回は無水エタノールを塞栓物質として使用し, その効果と肝切除後の予後について検討した.【方法】1990年4月より99年10月までの間に, 1期的肝右葉切除の適応基準を満たさず術前門脈塞栓術 (PVE) 後に肝右葉切除以上の右葉系切除を施行した原発性肝癌14例 (肝細胞癌12例, 胆管細胞癌1例, 混合型肝癌1例) を対象とした. 検討項目はPVEによる血液生化学検査値と肝容積の変化, ならびに同時期のPVEを行わずに右葉切除を施行した肝細胞癌63例を対照とし長期予後を検討した.【結果】無水エタノールの投与量は10~35mlで, 20ml以上投与した5例中2例で, 血小板値が前値に比べて半数以下へ減少した. 残存予定肝体積は前値354±25cm3より, PVE 2週間後495±33cm3 (対前値145±12%) となった (p<0.0005). これに伴い, 有効肝切除率は67.9±2.4%からPVE 2週間後に54.1±2.8%と有意に減少した. PVE後に肝切除を施行したHCC 12例の累積生存率は1, 3, 5年の順に100, 50, 50%であり, 同時期のPVE非施行肝切除症例63例の78, 53, 42%とほぼ同等であった.【考察】無水エタノールを用いた術前PVEは安全に施行可能で残存肝体積増加の点から有効であった. 術前PVEによる肝切除率の減少は, 原発性肝癌患者の肝切除適応を拡大し, その治療成績の向上に寄与すると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.34.189