十二指腸静脈瘤破裂の1治験例

我々は, 極めてまれな十二指腸静脈瘤破裂の1例を術前にPTPにて診断し, 手術により救命し得たので報告する. 症例は42才, 女性で, 既往に腸閉塞手術と胆嚢摘出術の2回の手術歴がある. 現病歴は, 昭和56年5月, 下血と貧血があり, 内視鏡にて食道静脈瘤や胃十二指腸潰瘍は認め られなかつたが, 十二指腸水平脚に新鮮血があり, PTPを施行した. 上腸間膜動脈の分枝である空腸静脈の1本が拡張・蛇行・屈曲して静脈瘤を形成し, 左腎静脈にshuntしていた. 静脈瘤を含めて十二指腸およびTreiz靱帯より約10cmの範囲の空腸を切除した. 術後は完全に止血し, 4年を経過した今日, 再出血の徴な...

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Published in医療 Vol. 40; no. 3; pp. 245 - 248
Main Authors 鬼塚, 伸也, 中田, 俊則, 伊藤, 新一郎, 古川, 正人, 松永, 尚文, 前田, 滋, 酒井, 敦, 山田, 隆平, 八十川, 要平, 藤井, 秀治, 千葉, 憲哉, 瀬戸口, 正幸, 永田, 寿礼, 天本, 裕平, 吉田, 一也, 近藤, 敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.03.1986
医療同好会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.40.245

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Summary:我々は, 極めてまれな十二指腸静脈瘤破裂の1例を術前にPTPにて診断し, 手術により救命し得たので報告する. 症例は42才, 女性で, 既往に腸閉塞手術と胆嚢摘出術の2回の手術歴がある. 現病歴は, 昭和56年5月, 下血と貧血があり, 内視鏡にて食道静脈瘤や胃十二指腸潰瘍は認め られなかつたが, 十二指腸水平脚に新鮮血があり, PTPを施行した. 上腸間膜動脈の分枝である空腸静脈の1本が拡張・蛇行・屈曲して静脈瘤を形成し, 左腎静脈にshuntしていた. 静脈瘤を含めて十二指腸およびTreiz靱帯より約10cmの範囲の空腸を切除した. 術後は完全に止血し, 4年を経過した今日, 再出血の徴なく健在である. 十二指腸静脈瘤は, 本邦にてこれまで10例の報告をみるにすぎず, まれな疾患であるが, 消化管出血の原因の一つとして念頭におくべきであり, 本症の診断にはPTPが有用であることを強調したい.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.40.245