単発性肝転移と多発性骨転移を来し肝細胞癌との鑑別が困難であった分化型甲状腺癌の1例

症例は56歳の女性で,肺癌検診精査中に肝腫瘍を指摘,当院を受診した.甲状腺乳頭癌に対し18年前に甲状腺右葉切除術を,腺腫様甲状腺腫に対し16年前に甲状腺全摘術を受けている.術前の血液検査ではサイログロブリンの著明な上昇を認めた.CTでは肝外側区域に早期相で濃染され,後期相でwash outされる,中心性瘢痕と被膜様構造を有する腫瘍を認めた.MRIでは左第7肋骨と第1腰椎に肝腫瘍と同時相で造影される腫瘍を認め,全身骨シンチでは第6胸椎と左第7肋骨に集積を認めた.以上から単発性肝腫瘍および多発性骨転移と診断したが,肝腫瘍は肝細胞癌と甲状腺癌の肝転移の可能性があった.肝腫瘍は切除可能と判断し外側区域...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 266 - 272
Main Authors 安田, 是和, 仁木, 利郎, 森嶋, 計, 田原, 真紀子, 仁平, 芳人, 俵藤, 正信, 佐田, 尚宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.03.2011
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.44.266

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Summary:症例は56歳の女性で,肺癌検診精査中に肝腫瘍を指摘,当院を受診した.甲状腺乳頭癌に対し18年前に甲状腺右葉切除術を,腺腫様甲状腺腫に対し16年前に甲状腺全摘術を受けている.術前の血液検査ではサイログロブリンの著明な上昇を認めた.CTでは肝外側区域に早期相で濃染され,後期相でwash outされる,中心性瘢痕と被膜様構造を有する腫瘍を認めた.MRIでは左第7肋骨と第1腰椎に肝腫瘍と同時相で造影される腫瘍を認め,全身骨シンチでは第6胸椎と左第7肋骨に集積を認めた.以上から単発性肝腫瘍および多発性骨転移と診断したが,肝腫瘍は肝細胞癌と甲状腺癌の肝転移の可能性があった.肝腫瘍は切除可能と判断し外側区域切除と肋骨生検を施行した.病理組織学的検査で両病変は,分化型甲状腺癌の転移と診断された.甲状腺乳頭癌の単発性肝転移は非常にまれで,文献的考察を加え報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.266