川崎医科大学附属病院矯正歯科における口蓋裂患者の臨床統計的観察 矯正歯科開設にいたるまでの約9年間について
川崎医科大学附属病院・矯正歯科における唇顎口蓋裂(CLP)患者の実態を把握する目的で, 矯正歯科が開設されるまでの約9年間に口腔外科・歯科矯正クリニックとして矯正治療を開始したCLP患者60名の臨床統計観察を行い, 次の結果を得た. まず初診患者数の総計ではCLP患者は総患者数の22.4%を占めていた.初診時年齢分布は3~6歳に集中し, 一般矯正患者よりも低年齢であった.治療待機期間終了後の再来率は, 一般矯正患者の32%に対し, CLPでは58%と高くなっている. 矯正治療開始時におけるHellmanの咬合発育段階の分布はIICに集中した.裂型分布では片側性唇顎口蓋裂(UCLP)52%, 両...
Saved in:
Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 11; no. 2; pp. 238 - 248 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
26.12.1986
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.11.2_238 |
Cover
Summary: | 川崎医科大学附属病院・矯正歯科における唇顎口蓋裂(CLP)患者の実態を把握する目的で, 矯正歯科が開設されるまでの約9年間に口腔外科・歯科矯正クリニックとして矯正治療を開始したCLP患者60名の臨床統計観察を行い, 次の結果を得た. まず初診患者数の総計ではCLP患者は総患者数の22.4%を占めていた.初診時年齢分布は3~6歳に集中し, 一般矯正患者よりも低年齢であった.治療待機期間終了後の再来率は, 一般矯正患者の32%に対し, CLPでは58%と高くなっている. 矯正治療開始時におけるHellmanの咬合発育段階の分布はIICに集中した.裂型分布では片側性唇顎口蓋裂(UCLP)52%, 両側性唇顎口蓋裂(BCLP)30%, 口唇(顎)裂(CL)17%, 口蓋裂(CP)1.7%であった.上下第1大臼歯の近遠心的関係はIII級が40%, II級が27%であった.咬合異常は下顎前突70%, 交叉咬合82%, 叢生50%, overclosure33%であるが, 開咬は8.3%であった.歯数の異常では, 過剰歯の頻度は比較的少なく, 先天的欠如歯は48名, 80%にみられた.上顎側切歯の裂型別の欠如率は, 左側UCLPでは左79%, 右33%であり, 右側UCLPでは両側とも57%であった.BCLP, CPでは左右差はなく60~70%の欠如率であった.出生時体重では2500g以下の低出生体重児が13%もみられた.口唇裂の初回形成手術時年齢は生後3~4か月が73%を占め, 平均3.4か月, 口蓋裂の初回形成手術時年齢は1年1か月~2年0か月で87%を占め, 平均は1年8か月であった.患児出生順位では, 第1子, 第2子を合わせると82%となり, 末子が41名, 68%と圧倒的に多いが, 逆にみれば, 19名, 32%が末子でないことになる.また, 同胞発現では2組の姉妹のCLP患者がみられた. |
---|---|
ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.11.2_238 |