新規血栓溶解薬YM866の薬物動態に関する研究[II]：ラットに125I-YM866を反復静脈内投与したときの分布，代謝および排泄

125I-YM866をラットに0.3mg/kg7日間反復静脈内投与したときの血漿中濃度，組織内分布，代謝および排泄について検討し，以下の結果を得た． 1．反復投与4および7日目の血漿における総放射能およびTCA沈澱性放射能濃度推移は，初回投与時とほぼ等しかった．GFC分析により，初回および反復投与後の血漿中にYM866とα2-macroglobulinの複合体，およびYM866とα2-plasmin inhibitorの複合体，YM866および低分子代謝物と推定されるピークが認められた．これらの存在比は反復投与により変動しなかった．2．反復投与後の総放射能濃度およびT/P比は，甲状腺を除きいず...

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Published in薬物動態 Vol. 11; no. 1; pp. 11 - 29
Main Authors 神村, 秀隆, 及川, 桂史, 竹越, 敏夫, 林, 一志, 黒澤, 敏, 神, 義容, 堤, 修一郎, 樋口, 三朗, 渡辺, 隆
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本薬物動態学会 29.02.1996
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ISSN0916-1139
DOI10.2133/dmpk.11.11

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Abstract 125I-YM866をラットに0.3mg/kg7日間反復静脈内投与したときの血漿中濃度，組織内分布，代謝および排泄について検討し，以下の結果を得た． 1．反復投与4および7日目の血漿における総放射能およびTCA沈澱性放射能濃度推移は，初回投与時とほぼ等しかった．GFC分析により，初回および反復投与後の血漿中にYM866とα2-macroglobulinの複合体，およびYM866とα2-plasmin inhibitorの複合体，YM866および低分子代謝物と推定されるピークが認められた．これらの存在比は反復投与により変動しなかった．2．反復投与後の総放射能濃度およびT/P比は，甲状腺を除きいずれの組織においても初回投与時と等しかった．組織に分布した放射能は遊離の125Iに由来する蓄積の認められた甲状腺を除き，ほとんどの組織において速やかに消失した．また，組織内放射能濃度は反復投与により影響を受けなかった． 3．各回投与後24時間における累積投与量に対する尿および糞中への累積排泄率には反復投与に伴う変化は認められなかった．最終投与後120時間までの尿中には累積投与量の93.0%，糞中には3.0%が排泄された．GFC分析により，尿中の放射能のほとんどは低分子代謝物あるいは遊離の125Iであることが明らかとなった． 4．以上の結果から，YM866の薬物動態は反復投与により顕著な影響を受けず，蓄積性や残留性を示さないことが明らかとなった．
AbstractList 125I-YM866をラットに0.3mg/kg7日間反復静脈内投与したときの血漿中濃度，組織内分布，代謝および排泄について検討し，以下の結果を得た． 1．反復投与4および7日目の血漿における総放射能およびTCA沈澱性放射能濃度推移は，初回投与時とほぼ等しかった．GFC分析により，初回および反復投与後の血漿中にYM866とα2-macroglobulinの複合体，およびYM866とα2-plasmin inhibitorの複合体，YM866および低分子代謝物と推定されるピークが認められた．これらの存在比は反復投与により変動しなかった．2．反復投与後の総放射能濃度およびT/P比は，甲状腺を除きいずれの組織においても初回投与時と等しかった．組織に分布した放射能は遊離の125Iに由来する蓄積の認められた甲状腺を除き，ほとんどの組織において速やかに消失した．また，組織内放射能濃度は反復投与により影響を受けなかった． 3．各回投与後24時間における累積投与量に対する尿および糞中への累積排泄率には反復投与に伴う変化は認められなかった．最終投与後120時間までの尿中には累積投与量の93.0%，糞中には3.0%が排泄された．GFC分析により，尿中の放射能のほとんどは低分子代謝物あるいは遊離の125Iであることが明らかとなった． 4．以上の結果から，YM866の薬物動態は反復投与により顕著な影響を受けず，蓄積性や残留性を示さないことが明らかとなった．
YM866は遺伝子組み替え技術により, 天然型tissue plasminogen activator(t-PA)のKringle-1 domeinを欠損させ, 275番目のArg残基をGlu残基に置換した第二世代の改変型t-PAである1). 本薬剤のフィブリン分解作用は天然型のt-PAと比較してより長いことがイヌ冠動脈血栓モデルを用いた試験で示されており2), 現在, 急性期の心筋梗塞を適応症として臨床開発が進められている. 我々は既に, ラットに125Iで標識したYM866(以後125I-YM866と略す)を単回静脈内投与したときの血中濃度推移, 分布, 代謝および排泄について報告した3). すなわち, 125I-YM866を単回静脈内投与すると, 血漿中ではα2-macroglobulinおよびα2-plasmin inhibitorと高分子複合体を形成すると推定され, ついで経時的に低分子代謝物(推定分子量1, 350以下)あるいは遊離の125Iに代謝分解され, 血漿中より消失した. しかし, その消失速度はt-PAより緩やかであった. また, 血漿中濃度は甲状腺を除くすべての組織の放射能濃度よりも高い値を示し, 肝臓, 腎臓, 副腎および肺など主要組織の放射能濃度は血漿中濃度の1/4から1/2であった. この結果は天然型t-PAが消失に携る肝臓に多く取り込まれ, 肝臓内濃度が血漿中濃度の2. 3倍4)に達することと大きく異なっていた. さらに甲状腺には遊離の125Iに由来する放射能の蓄積が認められたが, 投与した放射能の大部分は低分子代謝物あるいは遊離125Iとして尿中に排泄された.
Author 堤, 修一郎
林, 一志
及川, 桂史
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References 3) 及川桂史，神村秀隆，渡辺隆，宮本郁夫，樋口三朗：新規血栓溶解薬YM866の薬物動態に関する研究 [I]―ラットに125I-YM866を単回投与したときの分布，代謝および排泄―．薬物動態，10(6): 849-361 (1995
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4) 飯田成宇，岩本正人，鈴木将之，久永紀子，辻井直樹，小松貞子：遺伝子組換えヒト組織性plasminogen activator(rt-PA)の体内動態に関する研究 (1)―ラットに単回投与した時の血中濃度推移，分布，代謝および排泄―．薬物動態，3(3): 309-329 (1988
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12) 植村家顕，大谷勇作，柴田邦彦，古厩泰子，矢島多恵，棚山薫晴：組織型ヒトインターフェロンαA(Ro22-8181)のラットにおける薬物動態．基礎と臨床，19: 205-212 (1985
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– reference: 1) Kawauchi, Y., Morinaga, T., Yokota, M., Kinoshita, A., Kawamura, K., Suzuki, Y., Takayama, M., Furuichi, K. and Gushima, H.: Gene construction and large scale production of a novel fibrinolytic agent (YM866) in CHO cells. Thromb. Haemostas., 65: 1193 (1991).
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