スポーツ観戦空間再考 文化論的パースペクティヴから

現代社会においてスタジアム/ アリーナはただ単にスポーツを観戦する場所ではなく、様々な機能と意味をもつ場所となっている。そこで本稿ではそのようなスポーツ観戦空間について、筆者のいくつかの過去論稿をベースにしながらも新しい知見を参照しつつ、その文化論的パースペクティヴを提示/ 検討しながら機能/ 意味を解読し、最終的に今後の課題を示すことを目的とした。 まずスポーツ観戦空間がどのような足跡を辿ってきたのかを、主に近代スポーツ誕生後に盛んに建造されているスタジアム/ アリーナを対象にしながら、大まかな潮流ごとにその特徴を概観する。ここではスタジアム/ アリーナが歴史的にスポーツ観戦の輝かしい場所だ...

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Published inスポーツ社会学研究 Vol. 31; no. 1; pp. 7 - 22
Main Author 橋本, 純一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本スポーツ社会学会 30.03.2023
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ISSN0919-2751
2185-8691
DOI10.5987/jjsss.31-01-05

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Summary:現代社会においてスタジアム/ アリーナはただ単にスポーツを観戦する場所ではなく、様々な機能と意味をもつ場所となっている。そこで本稿ではそのようなスポーツ観戦空間について、筆者のいくつかの過去論稿をベースにしながらも新しい知見を参照しつつ、その文化論的パースペクティヴを提示/ 検討しながら機能/ 意味を解読し、最終的に今後の課題を示すことを目的とした。 まずスポーツ観戦空間がどのような足跡を辿ってきたのかを、主に近代スポーツ誕生後に盛んに建造されているスタジアム/ アリーナを対象にしながら、大まかな潮流ごとにその特徴を概観する。ここではスタジアム/ アリーナが歴史的にスポーツ観戦の輝かしい場所だけでなく、暴力、男性コミュニティ、群衆の喜怒哀楽、政治的集会等に利用されてきたことを提示する。 スタジアムの社会学的/ 文化論的機能として、ジェンダー規範、行動規範、支配的イデオロギー等、当該社会の状況、秩序、価値観を映し出すものであることを示す。同時に社会的/ 政治的な避難場所としての役割を担っていることを論ずる。 さらにスポーツ観戦空間の理解を深めるためのパースペクティヴのうち、消費主義及びグローバル資本主義を考察した後、重要なパースペクティヴとして「アイデンティティ/ プライド」の次元と「美」的次元について補足説明を加えた。 最後に、現時点での課題について、社会的アクティヴィズムや持続可能性の視点から検討した後、未来のスタジアム空間設計に向けて、ヴァナキュラー論、ジェンダー論、場所論の視点から、エンドユーザーを重視するホスピタリティ設計についてノーマティヴな提言を行なった。
ISSN:0919-2751
2185-8691
DOI:10.5987/jjsss.31-01-05