高齢者の在宅ケアアセスメント法の検討 高齢者と介護者の2領域からのケア状況評価の試み

在宅で療養している高齢者のケアニーズを評価するには在宅ケア状況を多面的に把握することが不可欠である.そこで, 在宅ケア状況を構成する高齢者の要介護状態と家族の介護状態の2領域から把握する「在宅ケアアセスメント表」を作成した.この評価表の構成概念と2領域の評価内容を検討した.構成概念はアセスメント表の得点を因子分析し, 得られた因子の数と信頼係数を確認した.「在宅アセスメント表」の評価内容の検討は高齢者の生活状態評価項目と「Activities of daily living20 (ADL20) 」, 家族の介護状態項目と「Cost of Care Index (CCI) 」の関連から検討した....

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 256 - 269
Main Authors 新野, 直明, 加藤, 基子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.06.1998
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.58.256

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Summary:在宅で療養している高齢者のケアニーズを評価するには在宅ケア状況を多面的に把握することが不可欠である.そこで, 在宅ケア状況を構成する高齢者の要介護状態と家族の介護状態の2領域から把握する「在宅ケアアセスメント表」を作成した.この評価表の構成概念と2領域の評価内容を検討した.構成概念はアセスメント表の得点を因子分析し, 得られた因子の数と信頼係数を確認した.「在宅アセスメント表」の評価内容の検討は高齢者の生活状態評価項目と「Activities of daily living20 (ADL20) 」, 家族の介護状態項目と「Cost of Care Index (CCI) 」の関連から検討した.「ADL20」は高齢者の障害を総合的にとらえる評価法である.「CCI」は家族の介護負担感を定量的に評価する尺度である.これに加えて, 訪問看護婦に高齢者と介護家族の在宅療養状態の主観的評価を依頼した.主観的評価は「Visual Analogue Scale (VAS) 」法を用い, その関連を分析した.対象は東京都, 神奈川県, 千葉県の16カ所の訪問看護ステーションを利用している高齢者と介護者の中から126ケースを選定した.調査はケース担当看護婦65名が訪問時に行った.その結果, 因子分析の固有値は第2因子までを示し, 第一因子に高齢者の生活状態の7項目が, 第二因子に家族の介護状態の7項目が0.3以上の因子負荷量を示した.累積寄与率は82.3%.各因子の信頼係数は第一因子が0.86, 第二因子が0.67であった.2領域と他の尺度との関連ではアセスメント表の高齢者生活状態と「ADL20」の得点間に高い相関がみられた.アセスメント表で自立度が高いと評価したケースは「ADL20」の機能障害の程度は低かった.アセスメント表の家族の介護状態得点と「CCI」得点にも関連がみられ, アセスメント表で介護状態が困難と評価したケースは介護負担感が高い傾向を示した.アセスメント表と「VAS」の関連では訪問看護婦が高齢者の障害が適切に補われ生き生きとした生活状態と評価したケースはアセスメント表では高齢者の自立度が高く評価されていた.また, 世話が適切で, 介護と家事との調整がよいと評価したケースではアセスメント表の家族の介護状態は十分と評価されていた. 以上の検討結果は在宅ケア状態を高齢者の生活状態と家族の介護状態の2領域から把握することをねらったアセスメント表の構成概念を支持した.2領域の評価内容も高齢者の生活状態項目は総合的な障害を評価し, 家族の介護状態項目は介護負担感と関連し, 家族の介護状態不足が負担感を高めるという実際の介護状況を反映するものであった.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.58.256