剖検例における骨髄線維化の病理組織学的検討 正常範囲の検討と骨髄異形成症候群 (MDS) に伴う骨髄線維化について

ヒト骨髄組織は細網線維のまばらな網状構造に支えられているが, 時に細網 (好銀) 線維の増加が認められることがある.病的な状態では一部の白血病, 骨髄異形成症候群 (MDS) , 慢性骨髄増殖性疾患などで骨髄線維化がみられる.今回, 骨髄線維化が原疾患の診断, 治療法の決定, 予後の推定などにどのような関係があるのか調べるために研究を行った.まず骨髄の好銀線維の量について, 剖検症例を用いて, 正常範囲の検討を行った.すなわち, 非血液疾患の剖検例から採取した骨髄組織をホルマリン固定, 脱灰操作後パラフィン包埋切片を作製し, 鍍銀染色を行った.光学顕微鏡的にその骨髄組織標本を観察し, 骨髄好銀...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 57; no. 3; pp. 198 - 208
Main Authors 九島, 巳樹, 鬼塚, 淑子, 石田, 憲毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.06.1997
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.57.198

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Summary:ヒト骨髄組織は細網線維のまばらな網状構造に支えられているが, 時に細網 (好銀) 線維の増加が認められることがある.病的な状態では一部の白血病, 骨髄異形成症候群 (MDS) , 慢性骨髄増殖性疾患などで骨髄線維化がみられる.今回, 骨髄線維化が原疾患の診断, 治療法の決定, 予後の推定などにどのような関係があるのか調べるために研究を行った.まず骨髄の好銀線維の量について, 剖検症例を用いて, 正常範囲の検討を行った.すなわち, 非血液疾患の剖検例から採取した骨髄組織をホルマリン固定, 脱灰操作後パラフィン包埋切片を作製し, 鍍銀染色を行った.光学顕微鏡的にその骨髄組織標本を観察し, 骨髄好銀線維の量をスコア化して半定量的に表した.その結果, 加齢により骨髄好銀線維は増加する傾向があった.また男性の方が女性より線維の量がやや多い傾向がうかがわれたが, 有意差はなかった.非血液疾患剖検例では線維化の程度はBauermeisterのscoringsystemで全例スコア2+以下, すなわち「線維化数」3以下であった.骨髄巨核数と骨髄線維化あるいは加齢との関係では, 巨核球系細胞のマーカーであるCD61の免疫染色を加えて検討したが, いずれも有意差はなかった.コラーゲンtypeIII, V, VIなどの免疫染色で骨髄組織を鍍銀染色と比較してみると, 大部分は類似の染色性を示したが, 両染色法の間にくい違いのみられる症例も少数認められた.この原因の解明は今後の研究に期待される.なおコラーゲンtypeIVとラミニンは骨髄内では血管基底膜のみに陽性であった.次に, 骨髄異形成症候群 (MDS) の剖検症例 (15例) を用いて, 同様の骨髄組織標本を作製して非血液疾患剖検例との比較を行った.鍍銀染色ではMDS症例でBauermeisterのscoring systemのスコア3+やスコア4+, われわれの線維化数で4と5を示す症例もみられた.また同年齢層の非血液疾患症例と比較して, 線維化の強い症例が多くみられた.このことは線維化を伴うMDS症例が一般に予後不良であるため, 剖検例の検索ではそのような症例が多くなるためと思われる.MDS症例でも男女差や骨髄巨核球数と骨髄線維化との関連はみられなかった.コラーゲンtypeIII, V, VIの免疫染色では非血液疾患例と同様に鍍銀染色と類似の染色性を示したが, やはり少数例で両者に多少の差がみられた.今後は生検例を用いて, 個々の症例の経過中における骨髄線維化を含めた骨髄組織の変化についても検討が必要である.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.57.198