警察の施策の認知が信頼に与える影響 伝統的信頼モデル,正統性モデル,主要価値類似性モデルの統合

本研究では,まず,警察に対する信頼確保の重要性を述べた後に,信頼の形成過程を説明するモデルとして,能力に注目する伝統的信頼モデル,警察から市民への接触機会における手続き的公正に注目する警察の正統性モデル,市民と警察の価値観共有に注目する主要価値類似性モデルを紹介した.さらに,警察に対する信頼と協力意図に関する国内の研究をレビューし,海外で主流の正統性モデルに代わって,警察の各種施策が市民に認知されることで,警察に対する市民の信頼水準が向上し,警察に対する協力が獲得できるとする仮説モデルを提案した.実証分析として,インターネットのモニターに対する社会調査を実施し,階層的重回帰分析およびパス解析を...

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Bibliographic Details
Published in犯罪社会学研究 Vol. 47; pp. 77 - 93
Main Authors 春田, 悠佳, 島田, 貴仁, 讃井, 知, 鈴木, あい
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本犯罪社会学会 20.10.2022
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ISSN0386-460X
2424-1695
DOI10.20621/jjscrim.47.0_77

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Summary:本研究では,まず,警察に対する信頼確保の重要性を述べた後に,信頼の形成過程を説明するモデルとして,能力に注目する伝統的信頼モデル,警察から市民への接触機会における手続き的公正に注目する警察の正統性モデル,市民と警察の価値観共有に注目する主要価値類似性モデルを紹介した.さらに,警察に対する信頼と協力意図に関する国内の研究をレビューし,海外で主流の正統性モデルに代わって,警察の各種施策が市民に認知されることで,警察に対する市民の信頼水準が向上し,警察に対する協力が獲得できるとする仮説モデルを提案した.実証分析として,インターネットのモニターに対する社会調査を実施し,階層的重回帰分析およびパス解析を用いて,信頼に関連する10の施策の認知,警察の能力認知,手続き的公正認知,価値類似性認知の3種類の媒介変数を経由して警察に対する信頼および協力意図を測定して,上記の仮説モデルを検討した.10のうち6施策の認知が,それぞれ異なる媒介変数を経て,警察への信頼および協力意図に影響していた.この結果を踏まえ,日本の警察の信頼確保施策についての含意を議論した.
ISSN:0386-460X
2424-1695
DOI:10.20621/jjscrim.47.0_77