ヒト臍帯血細胞の肝細胞への誘導と細胞移植

はじめに 現在, わが国には数百万人の肝炎ウイルスキャリアがいると推測されており, そのうち毎年3万人以上の肝疾患による死亡者がいると報告されている1). その中でも肝不全に対しては, 肝移植が唯一の確立された根治的治療法である. しかしながら, 現時点では脳死ドナーからの臓器提供は非常に少なく, 生体肝移植がその大部分を担っている.生体肝移植は, 本邦では良好な成績を残しているものの, ドナーとなりうる人には一定の制限があり, 必ずしもドナーが確保できるとは言えない, そして以前から, ドナー不足の問題点を解決する.方法として, 代替治療法開発の試みがなされてきた.その中でも近年, 成体肝か...

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Published in炎症・再生 Vol. 26; no. 1; pp. 44 - 48
Main Author 柿沼, 晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本炎症・再生医学会 2006
日本炎症・再生医学会
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ISSN1346-8022
1880-5795
DOI10.2492/jsir.26.44

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Summary:はじめに 現在, わが国には数百万人の肝炎ウイルスキャリアがいると推測されており, そのうち毎年3万人以上の肝疾患による死亡者がいると報告されている1). その中でも肝不全に対しては, 肝移植が唯一の確立された根治的治療法である. しかしながら, 現時点では脳死ドナーからの臓器提供は非常に少なく, 生体肝移植がその大部分を担っている.生体肝移植は, 本邦では良好な成績を残しているものの, ドナーとなりうる人には一定の制限があり, 必ずしもドナーが確保できるとは言えない, そして以前から, ドナー不足の問題点を解決する.方法として, 代替治療法開発の試みがなされてきた.その中でも近年, 成体肝から分離した肝細胞を移植する「肝細胞移植治療」については, 動物実験では多くの研究がなされ, 致死的な肝疾患を細胞移植によって救命できる動物モデルが報告されている2). また, 既にヒトに実施し, 一定の効果を上げたとする症例報告もなされている3).
ISSN:1346-8022
1880-5795
DOI:10.2492/jsir.26.44