フィールドワークの文脈における行為論 エスノメソドロジーのイマージョン実践の意味について

本稿は2022年度学会大会シンポジウム「「行為論再考」のねらいと、その方法論的射程をめぐって」における発表「フィールドワークの文脈における行為論」を論考としてまとめたものである。社会調査のフールドワークのなかで、予期せぬ事態の創発に対し、調査者はその事態といかに向きあえるのか、そしてそこから何を教訓として引き出せるのかという私に与えられた課題に対して、シュッツの「主観的解釈の公準(Postulate of Subjective Interpretation)」と「適合性の公準(Postulate of Adequacy)」を独特の仕方で継承したエスノメソドロジーのイマージョンというフィールドワ...

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Published in西日本社会学会年報 Vol. 21; pp. 27 - 39
Main Author 山田, 富秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本社会学会 2023
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ISSN1348-155X
2434-4400
DOI10.32197/sswj.21.0_27

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Summary:本稿は2022年度学会大会シンポジウム「「行為論再考」のねらいと、その方法論的射程をめぐって」における発表「フィールドワークの文脈における行為論」を論考としてまとめたものである。社会調査のフールドワークのなかで、予期せぬ事態の創発に対し、調査者はその事態といかに向きあえるのか、そしてそこから何を教訓として引き出せるのかという私に与えられた課題に対して、シュッツの「主観的解釈の公準(Postulate of Subjective Interpretation)」と「適合性の公準(Postulate of Adequacy)」を独特の仕方で継承したエスノメソドロジーのイマージョンというフィールドワークの方法に焦点を当て、そこから引き出された行為論に対するインプリケーションを明らかにした。すなわち、私が長期間携わった薬害エイズ事件の調査経験に照らして、予期せぬ事態は確かに調査を頓挫させる危機であるが、むしろ、それが社会科学者の二次的構築体という匿名的理解の水準を乗り越えていく重要な契機になっていくことを示した。結論として、フィールドワークの文脈における行為論の可能性を追求していくと、対象者から距離を置いた中立的な調査という従来の調査観は、フィールドワークの現実に耐えることができない。むしろ、社会科学者がフィールドワークから得た知見(二次的構築体)は、常に調査対象者による妥当性のテストに委ねられるだけでなく、このテストに委ねるために、社会科学者にはイマージョンを通して身につけた現場感覚が必須である。言い換えれば、調査者は一定期間のフィールドワークを経て、専門的コンピタンスを習得しなければならないのである。
ISSN:1348-155X
2434-4400
DOI:10.32197/sswj.21.0_27