肝硬変の病態栄養学的研究(第1報) 摂取食餌内容とくにその蛋白構成アミノ酸組成と栄養指標ならびに肝病態との関連性について

肝硬変の食餌治療を目的として,入院中の代償性肝硬変例について肝臓食の摂取状況を調査し,病院普通食の投与をうけている入院例を対照として,血清アミノ酸濃度,窒素出納などの栄養指標と各種肝機能検査成績からみた肝病態との関連性などについて検討した.現行の肝臓食は高蛋白(特に高動物性蛋白)食で,エネルギー,糖質と植物性脂肪は常食より少なく,非窒素エネルギー/gNは著しく低い.肝硬変例の喫食率はエネルギーで83.4%,蛋白質81.0%で,対照例に比し摂取エネルギーと脂肪(特に植物性脂肪)で少なく,蛋白量では差がなく,非窒素エネルギー/gNと分枝鎖アミノ酸(BCAA)/芳香族アミノ酸(AAA)モル濃度比が低...

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Published in肝臓 Vol. 21; no. 10; pp. 1330 - 1339
Main Authors 渡辺, 明治, 沖田, 美佐子, 長島, 秀夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.10.1980
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.21.1330

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Summary:肝硬変の食餌治療を目的として,入院中の代償性肝硬変例について肝臓食の摂取状況を調査し,病院普通食の投与をうけている入院例を対照として,血清アミノ酸濃度,窒素出納などの栄養指標と各種肝機能検査成績からみた肝病態との関連性などについて検討した.現行の肝臓食は高蛋白(特に高動物性蛋白)食で,エネルギー,糖質と植物性脂肪は常食より少なく,非窒素エネルギー/gNは著しく低い.肝硬変例の喫食率はエネルギーで83.4%,蛋白質81.0%で,対照例に比し摂取エネルギーと脂肪(特に植物性脂肪)で少なく,蛋白量では差がなく,非窒素エネルギー/gNと分枝鎖アミノ酸(BCAA)/芳香族アミノ酸(AAA)モル濃度比が低い傾向を示した.肝硬変例の体重kg当りのエネルギーと蛋白の摂取量は窒素出納と相関し,それぞれ25kcal/kg以上,1.2g/kg以上で窒素出納が正を示した.摂取食餌内容のうち肝病態と最も深い関連性を示したものは,食餌蛋白中アミノ酸のBCAA/AAAで,血清総蛋白とアルブミン濃度,さらにKICG値とも有意の正の相関を示した.摂取食餌蛋白中アミノ酸のBCAA,フェニールアラニン(Phe)量ならびにBCAA/Phe+チロジン(Tyr)が血清中のそれぞれの値と関連したことから,食餌中のこれらアミノ酸摂取量が血清レベルに反映され,さらに肝病態にも影響を及ぼすことが推測された.肝硬変治療食のあり方を,蛋白・アミノ酸栄養の面から再検討するうえで示唆に富む成績と思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.21.1330