膵液細胞診で腺癌と紡錘形細胞腫瘍の両成分が疑われ, 腫瘤が確認できないまま切除に至った浸潤径6mmの浸潤性膵管癌 (紡錘細胞型退形成癌) の1例

要旨 : 症例は63歳男性. 心窩部痛で近医を受診した. 腹部超音波検査で主膵管拡張を指摘され当院紹介となった. 画像検査では, 腫瘤は確認できなかったが, ERPの膵液細胞診にて腺癌を強く疑う腺系異型細胞集塊とともに間葉系腫瘍を示唆する紡錘形細胞からなる異型細胞集塊が認められたことから, 退形成癌あるいは腺癌と肉腫の合併などを疑い, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術に至った. 切除標本は全割され, 膵頭部主膵管内に突出し内腔を占拠する, 浸潤径6mmの紡錘細胞型退形成癌が, 病理組織学的に診断された. 術後34ヶ月の時点で再発なく良好な経過である. 退形成癌は, 膵悪性腫瘍のうち0.29%と非常...

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Published in膵臓 Vol. 33; no. 2; pp. 159 - 166
Main Authors 中村康宏, 田村哲男, 小泉優子, 小山里香子, 藤井丈士, 橋本雅司, 今村綱男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.04.2018
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ISSN0913-0071

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Summary:要旨 : 症例は63歳男性. 心窩部痛で近医を受診した. 腹部超音波検査で主膵管拡張を指摘され当院紹介となった. 画像検査では, 腫瘤は確認できなかったが, ERPの膵液細胞診にて腺癌を強く疑う腺系異型細胞集塊とともに間葉系腫瘍を示唆する紡錘形細胞からなる異型細胞集塊が認められたことから, 退形成癌あるいは腺癌と肉腫の合併などを疑い, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術に至った. 切除標本は全割され, 膵頭部主膵管内に突出し内腔を占拠する, 浸潤径6mmの紡錘細胞型退形成癌が, 病理組織学的に診断された. 術後34ヶ月の時点で再発なく良好な経過である. 退形成癌は, 膵悪性腫瘍のうち0.29%と非常に稀な膵悪性腫瘍の組織型で, 非常に予後不良な疾患である. 多くは進行癌として見つかるが, 本症例は膵液細胞診で悪性を示唆する所見が得られたため手術に至ることができ, 浸潤径6mmというごく初期に完全切除し得た貴重な症例であり報告する.
ISSN:0913-0071