重症頭部外傷に対する低体温法の使用経験

頭部外傷の治療の目的は外傷後の二次的損傷の予防と治療にあり, 外力による脳組織への一次的損傷はどのような治療法といえども修復することはできないのが実状であり, 現在の治療法は外傷に続いて発生する血腫や浮腫による脳組織の乏血と低酸素状態や脳の変位による脳ヘルニアの改善を目標としている. CTスキャンや脳血管撮影により血腫の診断精度は上昇し, より的確な手術的治療が可能となったが, 脳浮腫による頭蓋内圧亢進や脳幹損傷の場合の保存的療法にはいまだ十分な治療指針がなく, 良好な治療成績を上げられる治療方法を模索しているのが現状である. 1974年に頭蓋内圧を測定しつつ大量のbarbiturateを使用...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 25; no. 4; pp. 263 - 267
Main Authors 津金隆一, 大矢昌紀, 山本勇夫, 長谷川陽子, 松岡隆則, 竹井太, 伊藤正治, 文正夫, 野尻健, 佐藤修
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1985
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ISSN0470-8105

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Summary:頭部外傷の治療の目的は外傷後の二次的損傷の予防と治療にあり, 外力による脳組織への一次的損傷はどのような治療法といえども修復することはできないのが実状であり, 現在の治療法は外傷に続いて発生する血腫や浮腫による脳組織の乏血と低酸素状態や脳の変位による脳ヘルニアの改善を目標としている. CTスキャンや脳血管撮影により血腫の診断精度は上昇し, より的確な手術的治療が可能となったが, 脳浮腫による頭蓋内圧亢進や脳幹損傷の場合の保存的療法にはいまだ十分な治療指針がなく, 良好な治療成績を上げられる治療方法を模索しているのが現状である. 1974年に頭蓋内圧を測定しつつ大量のbarbiturateを使用する方法が発表され13), それにより治療成績は改善したが, それでも重症例の治療成績は悪く満足できる状態ではない. 我々は, 重症頭部外傷に対してbarbiturate, 過呼吸とともに全身低体温法を行うことを重症頭部外傷の治療方針としてきた. 本稿では, その方法の評価を行う.
ISSN:0470-8105