歯根膜感覚入力を受けるネコ大脳皮質第一次体性感覚野ニューロンの反応と形態
「I. 緒言」 歯根膜は, 食物の硬さなどの性状の弁別に対し重要な働きを有すること1,2)が知られている. 歯に加えられた刺激は歯根膜機械受容器を興奮させ, その興奮によって生じた活動電位は下歯槽神経あるいは眼窩下神経に伝播し, 延髄の三叉神経主感覚核ニューロンまたは三叉神経脊髄路核ニューロンに活動電位を生じさせる. 延髄に達した活動電位は, 歯根膜咬筋反射の反射弓を形成するものと対側の視床後内側腹側核(以後VPMと略す)を経て大脳皮質第一次体性感覚野(以後SIと略す)へと伝えられるもの3~7)とに分かれる. SIに伝えられた歯根膜感覚情報は, 歯に加えられた. 種々の刺激の強度あるいは刺激の...
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| Published in | 日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 43; no. 3; pp. 538 - 550 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本補綴歯科学会
1999
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0389-5386 |
Cover
| Summary: | 「I. 緒言」 歯根膜は, 食物の硬さなどの性状の弁別に対し重要な働きを有すること1,2)が知られている. 歯に加えられた刺激は歯根膜機械受容器を興奮させ, その興奮によって生じた活動電位は下歯槽神経あるいは眼窩下神経に伝播し, 延髄の三叉神経主感覚核ニューロンまたは三叉神経脊髄路核ニューロンに活動電位を生じさせる. 延髄に達した活動電位は, 歯根膜咬筋反射の反射弓を形成するものと対側の視床後内側腹側核(以後VPMと略す)を経て大脳皮質第一次体性感覚野(以後SIと略す)へと伝えられるもの3~7)とに分かれる. SIに伝えられた歯根膜感覚情報は, 歯に加えられた. 種々の刺激の強度あるいは刺激の方向などの弁別や認知に対し重要な役割を演じる1,2)と考えられている. 歯の機械刺激に対する歯根膜感覚受容器からの一次求心神経線維の電気生理学的応答特性を検討した研究によると, 歯根膜に分布する感覚受容器の多くは, 持続的機械刺激に対し遅順応性応答を示す遅順応性歯根膜駆動ニューロン(Slowly adapting type periodontal ligament driven neuron, 以後SA type PDNと略す)である8,9)といわれている. しかし, PDNは延髄, 視床そしてSIへと歯根膜感覚情報が上位中枢に伝えられるに従って, 機械刺激に対し速順応性応答を示す速順応性歯根膜駆動ニューロン(Rapidly adapting type PDN, 以後RA type PDNと略す)の検出される割合が増すという報告10~13)もある. SIにおいて, 歯根膜や口腔粘膜顔面皮膚からの感覚入力を受けるニューロンは, 体幹の皮膚のものと同様に, 体部位局在的に配列している14~19)といわれている. また, ネコのSIでPDN活動を細胞外記録した研究によると, PDNは, 冠状回外側部の口腔領域を中心として分布しているが, SIの口腔領域においては, 上下, 左右および犬歯あるいは臼歯の歯根膜感覚入力を受けるPDNの分布領域がそれぞれ異なり, 歯根膜感覚入力もSIにおいて体部位局在性が存在する16~19)といわれている. SIの顔面口腔領域は, 細胞構築学的に3a野および3b野に分類され, 各々の領域に分布するニューロンは, 機能的に異なる性質を有すること14~21)が明らかにされている. すなわち, 3a野には顔面口腔領域の固有感覚入力を受けるニューロンが多く, その上この領域は, 皮質内微小刺激によって顔面口腔領域に運動効果を誘発することが報告14~27)されている. 一方, 3b野には, 3a野よりも痛覚など閾値の高い感覚情報処理に関連したニューロンが多いと報告20)されている. また, SIに分布するPDNの多くは, 方向特異性を有さないRA type PDNであると報告14~19)されている. しかし, 従来の研究のすべてが, 細胞外記録によるものであるため, PDNの形態については, 今まで全く明らかにされていない. そこで本研究では, SIにおいてPDN活動を細胞内記録し, 電気生理学的にPDNであることを同定した後, neurobiotinを細胞内に注入して, その電気生理学的性質および形態を検討した. また, それらから歯根膜感覚と全身状態や顎機能との関連を考察した. |
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| ISSN: | 0389-5386 |