石灰又はセメント凝結材としての本邦産岩石風化物に關する調査及試驗 (第2報) 玄武土及火山灰に就て (長崎縣及佐賀縣)
1. 九州地方特に長崎縣及佐賀縣下に於て古くより用ひられた玄武岩風化物なる凝結材料に就て調査並に試驗した結果を記述した. 長崎, 佐賀兩縣下には玄武岩の分布極めて廣汎に亙り, 分布地帶にはその風化分解生成物たる天川粘土即ち玄武土が豐富に賦存し, 數百年の古より凝結材料として多く地方的に利用され, これを用ひた土木建築工作物が縣内の各地に多數遺されてをり又今日も五島火山灰, 唐津火山灰, 雲仙火山灰等は九州火山灰の名にてセメント混合材として優秀なものであり盛に使用されてゐる. 長崎縣五島列島には往時火山活動時の抛出物なる火山灰, 火山礫等の風化した凝結材が豐富に賦存しこれは質が少しく堅硬なれど唐...
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| Published in | 大日本窯業協會雑誌 Vol. 50; no. 598; pp. 524 - 532 |
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| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益社団法人 日本セラミックス協会
01.10.1942
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0366-9998 1884-2119 |
| DOI | 10.2109/jcersj1892.50.598_524 |
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| Summary: | 1. 九州地方特に長崎縣及佐賀縣下に於て古くより用ひられた玄武岩風化物なる凝結材料に就て調査並に試驗した結果を記述した. 長崎, 佐賀兩縣下には玄武岩の分布極めて廣汎に亙り, 分布地帶にはその風化分解生成物たる天川粘土即ち玄武土が豐富に賦存し, 數百年の古より凝結材料として多く地方的に利用され, これを用ひた土木建築工作物が縣内の各地に多數遺されてをり又今日も五島火山灰, 唐津火山灰, 雲仙火山灰等は九州火山灰の名にてセメント混合材として優秀なものであり盛に使用されてゐる. 長崎縣五島列島には往時火山活動時の抛出物なる火山灰, 火山礫等の風化した凝結材が豐富に賦存しこれは質が少しく堅硬なれど唐津火山灰類と同一成分を有しセメント混合材として使用し得るものであるが今日未だ餘りに知られてゐない. 2. 長崎, 佐賀兩縣下の上記凝結材の賦存状態, 産地, 産状並に利用状態に就いて調査した事項を詳しく論じた. 3. 調査に際して採取した代表的なる玄武土及び火山抛出物なる試料9種につき一般性質, 機械分析成分, 化學成分, 及び鑛物的成分等を試驗して凝結材料としての性質を比較した. 全分析及び可溶分析の結果より見ると, 試料9種の大部分は可溶性珪酸25%以上, 可溶礬土及同酸化鐵の合量30%以上を含み, 特に可溶礬土及同酸化鐵分を多量に含み石灰又はセメント混合材として充分に利用し得られることを認めた. 特に, 天川粘土 (長崎市) 諫早玄武土 (諫早町), 千綿玄武土 (千綿村), 平戸玄武土 (平戸町), 日見粘土 (日見村), 鬼岳火山灰 (福江町) 唐津火山灰等は古來より凝結材として地方的に利用されたものであり風化が良く進み品質が良好なるを認めた. 3. 古來より此種凝結材を用ひ築造された工作物を調査し, 同時に其凝結材の成分を分析して明にした. 特に, 平戸島のオランダ塀, 平戸町の幸橋, 同誓願寺石橋及び長崎市の眼鏡橋に用ひた凝結材料はポルトランドセメントの發明 (西歴1824年, 紀元2484年) 以前のものにして, 石灰と風化玄武土とのモルタルを使用し石灰は附近の海岸の貝殼を〓燒して得たものなるを明にした. 5. 長崎縣五島列島には火山灰及び火山礫が豐富に賦存せられ, 特に火山灰は五島火山灰の名にて古くより石灰又はセメント混合材之して用ひられ, 今日有名なる唐津町及び呼子町附近の唐津火山灰製造の端緒ともなつたと言はれてをり, 著者等の分析結果によると唐津火山灰と略類似の成分を有しセメント混和材として同樣に良質なるを認めた. 同島の埋藏量は全島嶼に亙り殆んど無盡藏と言はれてゐる. 然しながら五島産の火山灰は質が少しく堅硬にして粉碎に勞力を要し, 地理的に不利にして今日は殆んど顧られてゐない. 6. セメントの不足せる今日地方的に用ひられてゐる天川コンクリートの配合, 混合, 突固め, 養生に就て調査した事項を述べた. 7. 採取した試料9種につき石灰モルタル供試體を作りセメント試驗と同一趣旨の試驗を行ひその凝結, 強度, 耐鹹性, 可工性等を調べて比較して見た. 石灰モルタルはセメントモルタルに較べて凝結遲く始發10時以上, 終結30時以上に及ぶものが多く, 強度の發生も弱く約3ヶ月にて最大となり其後強度の増進が見られない. 材齡6ヶ月 (26週) に於ける強度は, 曲げ強さ25 35kg/cm2, 壓縮強さ80-130kg/cm2程度に過ぎない. 強度は又温度, 配合, 水量等により可成影響される處多くセメントモルタルの場合に較べて硬化が可成に復雜である. 其他, 耐鹹性はセメントに較べて遙に弱く, モルタルは著しく粘稠にして可土性 (Workability) が甚だ低い. |
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| ISSN: | 0366-9998 1884-2119 |
| DOI: | 10.2109/jcersj1892.50.598_524 |