唇・顎・口蓋裂患者に対する初回ロ蓋形成手術の遠隔成績 第1報1歳代および2歳代手術例の言語成績について

昭和52年1月から昭和57年12月までの6年間に東京医科歯科大学歯学部第1口腔外科で3歳未満に初回口蓋形成手術を行った唇・顎・口蓋裂患者のうち330例に関して, 術後2年後の鼻咽腔閉鎖機能について検討し, また, このうち266例について4~5歳時の構音を評価した.鼻咽腔閉鎖機能および構音の評価は日本音声言語医学会口蓋裂言語小委員会の試案を用いて行った.また, 手術時に口蓋裂幅, 術前術後の口蓋垂一咽頭後壁問距離, push back距離について計測し鼻咽腔閉鎖機能との関係を検討した. その結果, 鼻咽腔閉鎖機能良好例は, 1歳代手術例では258例中229例(88.8%), 2歳代手術例では7...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 11; no. 1; pp. 62 - 69
Main Authors 大平, 章子, 塩田, 重利, 大山, 喬史, 天笠, 光雄, 門脇, 伸子, 伊東, 節子, 橋本, 賢二, 佐藤, 和子, 石井, 純一, 吉増, 秀實, 冨塚, 謙一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 30.06.1986
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.11.1_62

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Summary:昭和52年1月から昭和57年12月までの6年間に東京医科歯科大学歯学部第1口腔外科で3歳未満に初回口蓋形成手術を行った唇・顎・口蓋裂患者のうち330例に関して, 術後2年後の鼻咽腔閉鎖機能について検討し, また, このうち266例について4~5歳時の構音を評価した.鼻咽腔閉鎖機能および構音の評価は日本音声言語医学会口蓋裂言語小委員会の試案を用いて行った.また, 手術時に口蓋裂幅, 術前術後の口蓋垂一咽頭後壁問距離, push back距離について計測し鼻咽腔閉鎖機能との関係を検討した. その結果, 鼻咽腔閉鎖機能良好例は, 1歳代手術例では258例中229例(88.8%), 2歳代手術例では72例中61例(84.7%)であり, 裂型別では唇顎口蓋裂では, 193例中160例(82.9%), 口蓋裂では137例中130例(94.9%)で, 口蓋裂が唇顎口蓋裂より良好な鼻咽腔閉鎖機能を示し, 1%の危険率で有意差が認められた.一方, 手術時の計測値からみると, 唇顎口蓋裂は口蓋裂より裂幅が有意に広く, また, 口蓋垂一咽頭後壁間距離は術前術後とも大きく, このことが鼻咽腔閉鎖機能の予後と関係しているように思われた.しかし, 片側性唇顎口蓋裂のなかで鼻咽腔閉鎖機能軽度不全例, 不全例と判定されたものも良好例と同様の口蓋裂幅, 口蓋垂一咽頭後壁間距離を示し, 鼻咽腔閉鎖機能不全の原因として, 裂に伴う筋の走行の異常や, 術後の癩痕による軟口蓋の運動障害なども関与していると考えられた.また, 異常構音に関しては, 鼻咽腔閉鎖機能不全があると出現頻度は著しく高く, 特に, 声門破裂音は鼻咽腔閉鎖機能と関係が深いことが示された.さらに, 口蓋化構音および側音化構音は口蓋裂より唇顎口蓋裂に有意に多く観察され, 裂型間の咬合状態の違いや上顎の狭窄, 鼻腔一口腔痩のほか口蓋形成術前の顎裂や硬口蓋裂の存在による舌位の変化などが誘因となっていると推察された.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.11.1_62